2020.01.27 議会運営
第69回 不穏当な言動と懲罰
なお、最高裁昭和35.10.19判決(民集14巻12号2633頁)で、裁判所は、憲法に特別の定めがある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判する権限を有するが、自律的な法規範をもつ社会ないし団体において、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せるのが相当である場合には、法律上の争訟に当たらず、司法審査の対象とはならないものと解される。そして、普通地方公共団体の議会は、憲法93条1項によってその設置が定められ、地方自治法によって、会議規則を設けなければならないことや、同法及び会議規則等に違反した議員に対して、公開の議場における戒告及び陳謝、一定期間の出席停止並びに除名の各懲罰を科することができることなどが定められている自律的な法規範をもつ団体であるから、そこにおける法律上の係争については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法審査の対象とはならないというべきであるとし、原則として戒告、陳謝、出席停止についての議会の判断に裁判所は介入しないことと解されている。なお、除名については、最高裁昭和27.12.4判決(裁判集民7号595頁)で「市議会における議員の除名議決は、特にこれに基ずく執行機関の処分をまたず直にその議員をして議員たる地位を失わしめる法律効果を生ぜしめる行為であるから、一種の行政処分と解すべく、この場合の市議会は行政訴訟特例法1条にいわゆる行政庁に該当すると解するを相当とする」とし、裁判所の判断が及ぶとしている。