2020.01.27 議会運営
第69回 不穏当な言動と懲罰
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
不穏当な言動と懲罰
議員が議会での一般質問において、執行機関に対し地方自治法(以下「法」という)132条において禁じられている他人の私生活にわたる言論及び無礼の言葉の使用をしてしまった。この後、当該議員より発言の取消申出が提出され、本会議で許可されたが、以前から不穏当な言論が行われていたことに鑑み、懲罰動議が提出される見込みである。
そこで懲罰に当たり、今回の不穏当な言動のみでなく過去における不穏当な言動を考慮し懲罰を科することは可能か。また、当該議員は、懲罰特別委員会において懲罰動議を提出した議員に対し刑事告発する用意があることや損害賠償を求めて訴える旨の発言を行ったが、これは懲罰を加重する要因となりうるか。
地方議会議員は、法132条「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」の規定により、本会議及び委員会において無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をすることが禁じられている。この規定の意味するところは、①本会議の議場及び委員会の会場は公の問題を議する場所であるから、議事に関係のない個人の問題を論ずべきではないということ、②無礼の言葉や他人の私生活にわたる言論、人身攻撃等によって議場や会場の平静さが失われることを防ごうとすることであるといえる。
ここで、選挙により住民の負託を受けた議員は、第三者に対して無礼な言葉を用いてはいけないことは当然であるが、さらに他人の私生活にわたる言論をすることも禁止されているのはなぜか。