2020.01.27 議会改革
第4回 議会の権限をしっかりと把握する
5 議会の権能をどう見るか
以上のように、議会の権限は、一般に理解されている以上に広範なものとなっている。
これに対しては、議会の議決権の対象は地方自治法96条1項で限定列挙されているのと比べ、長の権限は地方自治法149条で例示されるにとどまり、他の機関の権限とされていない限り広く長の権限としての推定が及ぶほか、長には統轄代表権なども認められているなどとして、長の権限の広さや強さ(ないしそれと比較した場合の議会の権限の弱さ)が語られることが多い。
しかし、制度的に、自治における主要な事項は、議会の決定に留保されており、また、条例でその対象を拡大することも可能である。議会には、多様な監視権限も認められている。
その点では、議会の運用・対応次第ともいえるのであり、議会にはそれらの権限をうまく使いこなしていくことが求められている。
もっとも、長には、そのほかに、再議(拒否権)、専決処分(一種の代行権)などの権限も認められており、その運用の仕方いかんによっては、議会の機能が大きく制約されることにもなりかねない。とりわけ、予算を再議に付した場合の長の原案執行権や、緊急を要し議会招集の時間的余裕がない場合等の条例等の専決処分については、議会の議決なしにそれらが成立することにもなる。特に、安易に用いられがちな専決処分については、それぞれの自治体において、議会と長との間で、その適切かつ謙抑的な行使のためのルールが形成・確立されていく必要がある。
なお、自律権は、他の機関からの干渉などを排除して自主的にその権能を行使し、自律的な運営・活動を保障するものであるが、自治体議会の自律権については、制度的にいろいろと制約されており、また、関係者の間でもその重要性が必ずしも十分に理解されているとは言い難い(5)。その制約や実質的な影響の問題などにも、もっと目を向けていくべきではないだろうか。
(1) 議会の意思決定は、通常、議決によって行われており、このようなことから同意・決定などのような議会の機関としての意思決定も含めて議決権としてとらえる見方もあるが、一般には、それらを含まずに、団体意思の決定としての議決のみを「議決権」と呼ぶことが多い。
(2) ただし、①の条例の制定改廃、②の予算の議決、④の地方税の賦課徴収、分担金・使用料・加入金・手数料の徴収、⑬の損害賠償の額の決定については、別途、公布や公表が規定されるなどしているものの、議会の議決によって効果を生じるものである。
(3) 諸外国の議会では電子請願を導入するところが増えているが、日本の国会では、これを認めておらず、また、自治体議会でも、地方自治法124条が「請願書」としていることなどもあって、ほとんどの議会が文書によることを求めており、陳情につき電子メールによることも認めている議会が見られるにとどまる。
(4) 選挙権については、議決とは異なる手続として地方自治法118条でその手続が規定されていることなどもあって、議決権や監視権と並ぶ権限とされることも多かった。しかし、議長・副議長等の選挙は自律権に属するものととらえるのが妥当であり、また、条例等で委員会の委員長等の選挙について定めた場合にも、それも自律権によるものといえる。そうなると、選挙権の対象となるのは、選挙管理委員・補充員のほか、広域連合の議会の議員(間接選挙の場合)にとどまり、議会の権限としての比重はそれほど大きくはないともいえるだろう。
(5) 例えば、法令との法的適合性はともかく、手続の面で法令や会議規則に違反するかどうかを長が再議に付す形でチェックし、なお是正されない場合には、総務大臣や都道府県知事が審査するというのは、地方自治法において議会の自律権につき十分な配慮がなされていないこと(あるいは議会に対するパターナリズム的な制約)の一つの表れと見ることもできる。また、本連載の次々回以降でも触れるように、議会においても、会議規則よりも条例の形式を重視するなど自律権に関する理解が十分とはいえないような状況が見られる。
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