2020.01.27 議会改革
第4回 議会の権限をしっかりと把握する
(3)調査権
調査権は、議会がその重要な職責を十分果たすことができるよう、その自治体の事務について認められているものであり、その根拠が地方自治法100条であることから、一般に「100条調査権」などと呼ばれている。調査権の本質は、議会が有する議決権、一般的な質問、検査権、監査請求等の諸権限を有効かつ適切に行使するために認められる補助的な権限であるということができる。
議会の調査権の対象となりうるのは、自治体の事務であり、その事務に属する限り、議会の調査は、議案調査に限らず、政治調査や事務調査も可能とされている。また、自治事務に限らず、法定受託事務も調査権の対象となるが、自治事務については労働委員会・収用委員会の権限に属する事務、法定受託事務については国の安全や個人の秘密を害するおそれがある事項や収用委員会の権限に属する事務がその対象外とされていることは、上記(2)と同じである。
調査権は議会に与えられた権限であり、常任委員会に調査を委託し、又は特別委員会を設置して調査に当たらせているのが一般的である。ただし、調査権は議会固有のものであり、条例や会議規則で、委員会に一般的・包括的に委譲することはできず、委員会は議会から付託された事件についてその付託の限りで行うことができる。
議会が調査を行うに当たって、特に必要があると認められるときは、強制的な方法によることも認められ、選挙人その他の関係人の出頭・証言及び記録提出を求めることができ、関係人が正当な理由なく証言等を拒んだ場合には、議会の告発により、6か月以下の禁錮又は10万円以下の罰金が科されるほか、宣誓をしてから虚偽の陳述をした場合には3か月以上5年以下の禁錮に処せられることになっている。議会による証言の請求については、民事訴訟法の証人尋問の規定が準用される。
また、関係人が公務員たる地位において知りえた事実について職務上の秘密に属するものである旨の申立てがあったときは、所属の官公署の承認がなければ証言・記録の提出を請求することができないものの、官公署が承認を拒む場合にはその理由を疎明しなければならず、議会はそれが理由がないと認めるときは、証言・記録の提出が公の利益を害する旨の声明を官公署に対し要求することができる。その場合、官公署が要求を受けた日から20日以内に声明をしないときは、関係人は証言・記録の提出をしなければならないものとされている。
このように、調査権は、その実効性を担保するため強制力が与えられている点で、常任委員会の一般的調査権と大きく異なるのであり、総合的な見地から必要性・公益性を考慮し、有効かつ適切に行使することが求められる。
このほか、議会が調査のため、その自治体の区域内の団体等に対し照会をし、あるいは記録の送付を求めたときは、その団体等はそれに応じなければならないものとされている。この場合の団体等には、公法人・私法人を問わず広く諸団体が含まれる。