2020.01.27 議会改革
第4回 議会の権限をしっかりと把握する
2 議決権
議会の議決権は、地方自治体の主要な事務について団体の意思を決定する権限であり、議会が自治体の議事機関として設けられるものであることからは、議会が有する多種多様な権限の中でも、最も本質的・中心的なものといえる(1)。議会の議決権は、自治権の拡充とともに、その重要性を増してきている。
議会の議決すべき事項(議決事件)については、地方自治法96条1項に列挙されている。そこでまず、議決事件として規定されているものを具体的に挙げておきたい。
① 条例の制定改廃
② 予算の議決
③ 決算の認定
④ 地方税の賦課徴収、分担金・使用料・加入金・手数料の徴収
⑤ 条例で定める契約の締結
⑥ 財産の交換・出資・支払手段としての使用や適正な対価なくしての譲渡・貸付け
⑦ 不動産の信託
⑧ 条例で定める財産の取得・処分
⑨ 負担付きの寄附・贈与
⑩ 権利の放棄
⑪ 条例で定める重要な公の施設の長期かつ独占的な利用
⑫ 地方自治体がその当事者である不服申立て、訴えの提起、和解、あっせん、調停、仲裁
⑬ 損害賠償の額の決定
⑭ 区域内の公共的団体等の活動の総合調整
⑮ その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む)により議会の権限に属する事項
これらの議決は、自治体の団体としての意思を決定するものであるが、⑬を除く議決事件は、実質的には、その行使を通じて、執行機関の行財政や政策に対するチェック・統制といった意味をもつものでもあり、③以下のものは特にそのような観点・色彩が強いといえる。
また、⑮で確認的に掲げられている法律等で議会の議決を要するとされている事項も少なくない。例えば、地方自治法、地方財政法、地方公営企業法、地方独立行政法人法、道路法、PFI法、土地改良法、介護保険法など様々な法律で規定されており、議決の対象とされている事項についても、自治体としての申請・意見・協議・同意・決定等、指定金融機関や公の施設の指定管理者の指定、自治体の組合の設置の協議、地方独立行政法人や地方公社の設立、計画の策定、一定の契約の締結、道路の路線の認定、公共施設等運営権の設定、負担や負担金の額、特定の事業の実施など、多岐にわたっている。
このほか、議会は条例で議決事件を定め、自主的に議決事項を増加することもできる(地方自治法96条2項)。その場合に、自治事務はもちろん、法定受託事務に関するものについても、条例で議会の議決事項として追加することができるが、国の安全に関することなどの事由により議会の議決事項とすることが適当でないものとして政令で定めるものは対象外とされており、政令では、武力攻撃事態等国民保護法により自治体が処理する事務と、災害救助の程度・方法・期間の基準を独自に都道府県が定める事務が規定されている。
これにより、これまでにも、各種の総合計画などの重要な行政計画を議会の議決事件として追加することなどが行われてきており、議会の機能の拡大・強化の観点から、一層の活用が期待されているところだ。
以上のように、議決権の及ぶ範囲はかなり広く、自治体に関する重要事項、特に住民の権利義務に関する事項はほぼ網羅されているということができる。ただ、その一方で、法律上、長その他の執行機関の専権に属するとされている事項については議決権の対象とすることはできないこと、自治体の団体意思の決定は長などの執行機関でも行われることがあることには、注意が必要だ。
なお、議決事件において議会の議決によって自治体としての意思が決定されることになる場合には、その効力については、長が自治体を代表してこれを外に向かって表示することにより初めて対外的効力が発生するものが多い(2)。これに対し、機関意思の決定である議会の決定などの場合には、その決定あるいは議会自らの表示により、対外的なものも含め効力を生じることになる。