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特集 はじめての議案審査~予算編

2020.01.27 予算・決算

自治体の予算とはそもそも何か(下)(特集3)

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(4)債務負担行為
​ 翌年度以降の支出を行うため、あらかじめその限度額と期間を事項ごとに定めておく制度を債務負担行為という。つまり、債務(借金)を負担する行為だが、これも予算で定める必要がある。 
 例えば、令和2年度予算の中に、○○図書館整備事業として10億円の歳出予算を計上したとする。しかし、それとは別に債務負担行為として「○○図書館整備事業 令和3~5年度 限度額30億円」が記載されていれば、「令和3~5年度に○○図書館整備事業として30億円の支払を予定している」ということを示している。これにより令和2~5年度の複数年にわたる工事の契約が可能となる。 
 また、限度額については明確に額を定めずに、「○○市が○○土地開発公社から取得する用地費」のように明記する場合がある。損失補償や債務保証などの金額の確定のないものでも、債務負担行為とすることができる。

(5)地方債
 地方債は、特定の目的に充てるために、自治体が他の者から2か年度以上にわたって長期に借り入れるもの。主に、公共施設の建設事業費や土地購入費、災害応急事業費など、建設地方債と呼ばれる施設などの建設に係るものが多くなっているのが実態である。 
 地方債の役割は二つある。一つは、住民負担の世代間の公平化である。自治体で施設を建設すると、当然のことながら、施設ができてから20年、30年と使い続けることになる。このため、20年後、30年後の住民にも借金を負担してもらい、世代間で負担を公平にするという役割がある。 
 もう一つは、財政負担の平準化である。例えば、施設建設を行うときは一度に多額の支払を行い、その前後は通常の財政状態になる、というような財政では、年度によって予算に大きな差が出てしまう。これでは安定した行政運営を行うことはできず、住民も混乱してしまう。こうした事態を防ぐために、多額の資金が必要なとき、長期にわたって少しずつ返済していく。

(6)一時借入金
​ これは「いちじかりいれきん」と読み、略して「いちかり」と呼ばれている。文字どおり、年度内の一時的な資金繰りを目的とした借入金である。 
 例えば、予算では歳入と歳出の額が決められているが、年度当初から歳入が満額あるわけではない。税収は、納期が決まっており、その納期にならないと自治体の歳入とならない。国などからの補助金などについても、年度当初から振り込まれるとは限らない。 
 このため、場合によっては現金が不足することとなり、そのために一時お金を借りることがある。それがこの一時借入金であり、予算では、この一時借入金の限度額を定める。

(7)歳出予算の各項の経費の金額の流用
 流用とは、予算の補正等を行わないで、予算執行上の処理として一定の経費に充てるための財源を他の支出項目に充当すること。   
 予算の流用については、議決科目である「款」・「項」については原則禁止されている。ただし、各項の経費は予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより、これを流用することができるとされている(法220条2項)。 
 具体的には、予算案における予算総則の中で、「歳出予算の各項の経費の金額を流用することができる場合は、各項に計上した給料、職員手当等及び共済費に係る予算額に過不足を生じた場合における同一款内でのこれらの経費の各項の間とする」などと規定している。  
 予算の執行科目である「目」・「節」については議決対象でないため、状況の変化に応じて対応することができる。しかしながら、何でも勝手に流用してしまっては、予算が混乱してしまう。  
 このため、「目」・「節」についても原則は流用禁止としながらも、歳出予算の執行上やむをえない場合に限り、各目、各節間において相互に流用することができることを予算事務規則などで規定している。  
 なお、実務では、いったん流用して対応した後、補正予算で本来必要な予算を計上し、その後、流用先(財源が不足したため流用により予算を充当したもの)から、流用元(財源の借入先)に金額を返還したりする。これを「流用繰戻」とか「流用戻し」といったりする。

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