地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2019.12.25 議会改革

第3回 議会の位置付け・役割を改めて確認する

LINEで送る

2 議会の役割・あり方を見定める

 その上で、自治体議会の役割やあり方について、改めて確認しておこう。
 議会の役割を一言で表すならば、合議制の議事機関・監視機関ということになるだろう。

(1)議事機関
 議会が議事機関であることについては、憲法93条1項が規定する。「議事」は、議題について審議を行うことを意味する言葉であるが、ここで議事機関というのは議決機関であることも意味し、住民の代表機関として議論を行い、自治体の意思を決定する機関であることを表しているといえる。
 そして、議事機関ということで特に強調しておきたいのは、政策決定機関であるということである。すなわち、単に団体の意思を決定する議決機関というだけではなく、自治体の基本政策を決定する機関だということであり、自治体の重要政策の決定権については議会に留保されるべきである。特に、自治立法の中心となる条例や行政活動の基本・施策の具体的表現となる予算については、長による専決処分や再議・原案執行といったものがあるものの、議会の議決がない限りは成立することはない。
 このことは、当たり前のことのように思われるかもしれない。しかし、議会の正統性付与の権限は議会の力の源泉・政治的資源なのであり、そのことをきちんと認識して、権限を行使していくことが必要である。
 その場合には、決定に至る過程が大事となるのであり、審議の場に多様な民意を表出し、公開の議論を通じて合意形成を図るフォーラムであることが求められることになる。
 審議を充実させ、その実質化を図っていくためには、質疑だけでなく、討議も重要であり、議員間討議の導入は議会改革の目玉の一つともされている。ただ、議員間の討議が機能するには、それなりの環境や努力が必要となり、そうでなければ、単なる言いっ放しで終わるおそれがある。
 まず、議論が成立するためには、参加者の対等性が確保され、相互に認め合い尊重し合うことが前提となるとともに、理由を示しての主張、反論の機会の保障などが必要となる。特に、そこでは、少数派の機会の保障といったことも求められる。
 また、討議が有効に機能するためには、何らかの共通の基盤や説得・妥協の余地が必要であり、議論を通じて結論が変わりうることが前提となる。しかしながら、社会の複雑化・多様化と社会的利害の対立の激化により、討議を通じた説得・妥協による統合ということはますます困難となってきている(10)。政党化が進んでいる場合には、その党議拘束や統制との関係も問題となる。
 なお、日本の国会や自治体議会ではびこっている事前の根回しの慣行は、議会の場での議論の意味を失わせることにもつながりかねず、議会が政策決定機関・チェック機関としての機能を果たしていくためには、少なくとも質問と答弁をすり合わせるような行き過ぎた事前調整などについては是正していく必要がある。行き過ぎた根回しは、なれ合いや癒着を招き、口利きや利益誘導につながる土壌ともなりかねない。
  他方、議会は、決定機関である以上、いつまでも議論を続けるわけにはいかず、どこかで多数決により決める必要が出てくることになる。そこでは、議決責任といったことがいわれることもある。その趣旨は必ずしも明らかではないところもあるが、議決に参加した議員がその表決に責任をもつことは当然である。それは、政治的・道義的な責任にとどまるものであるが、その責任の明確化のためにも、議員の投票行動(賛否)に関する情報が公開されることが必要不可欠である。
 次々と生じる問題への対応のために機動性や効率性が要請される現代においては、議会はともすれば非効率なシステムと見られがちである。しかし、いたずらな時間の引き延ばしや先送りは許されないとしても、社会として、議会制民主主義には時間や手間がかかり、長い目で見ればそのことが住民の利益にもつながってくることが理解されるようにしていくことが肝要といえるだろう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る