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2019.12.25 議会改革

最終回に当たって

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国の報告書のレビュー

 自治体議会の問題に直面し、当の自治体も、国(総務省)も、手をこまねいているわけではない。自治体現場での議会改革の試みは、様々な「先進事例」として紹介されているところである。ただ、このような「先進事例」は、上記のように、自治体議会の既存の深層の論理の中で展開するものであり、なかなか特効薬が見込めないものである。  
 国は制度改革をすることが可能であるから、制度によって議会の直面する問題を解消できるかもしれないと期待される。もちろん、制度改革でできることとできないことがあり、制度改革だけではすまない問題もあろう。とはいえ、国の対策検討も、自治体現場としては、無関心ではいられない。こうして、連載の後半(2015年7月27日号=「『地方議会に関する研究会報告書』について(その1)」以降)では、国の地方議会に関する研究会報告書をつぶさに検討してきたところである。  
 報告書のレビューは、政府が提示する議論を素材とする、極めて重要な作業である。現場では、しばしば法改正がなされてから、それにどのように対応するのか、慌てることがある。あるいは、早くても、法案が提出されてから、右往左往することになる。しかし、制度改革構想や法改正案は、突然に浮上するものではない。むしろ、一定の検討期間を経て形成されるものである。最終段階では、地方制度調査会のような正規の審議会に諮問されることが多い。その意味で、審議会の答申のレビューは大事である。しかし、しばしば、正規の審議会に諮問する前に、アイデアを検討するオモテの研究会が組織され、その報告書が出される。この段階で英知を結集することが、本来は大事だと考えられる。なお、さらに、こうした研究会の議事録は公開されるとは限らず、あるいは、オモテの研究会の前の内部のウラの検討の舞台もあろう。しかし、このようなところまでレビューすることは困難である。 
 さて、連載で素材に挙がった報告書であるが、その詳細な検討は各回を再度、参照いただくしかない。総じていえることは、議会の諸問題を解決するような実効的な制度を立案することは、極めて難しいということである。研究会での苦闘の跡がいろいろ見られるが、制度改革によって問題が解消される見込みはほとんど立っていないのが、実状である。制度改革をすれば、何らかの変化は起きるだろう。しかし、現状の議会が直面する問題が、深層の論理に起因する場合には、結局のところ、同じような問題が異なる制度のもとで噴出するだけであろう。 
 制度改革は、ある理念を目指して構築することはできるかもしれないが、それは現在の問題を解消することにはつながらないだろう。となると、現在の議会の理念を変えるほど、大きくて新しい意味ある理念を打ち出せるのかが問われるが、必ずしも、そのようなアイデアはない。また、合意形成できる見込みもない。しかも、問題を解消することにもつながらない。こうして、累次の自治体議会関係の国の報告書は、漂流を続けているという実感を拭いきれない。

新たな検討テーマに向けて

 さて、以上のように大きく二つのテーマに関心を持った本連載であるが、ここに衣替えをしようと思う。前者の深層の論理については、「トリセツ」において一定の結論を出したところである。後者の国の報告書のレビューについては、報告書の中身について、あまり見るべき成果がないということで、これ以上の検討には手詰まり感がある。国は、折に触れて、定期的に研究会を開催するし、また、特定の事項については、地方制度調査会などで議論するかもしれない。例えば、議員候補の住所要件の確認の厳格化など、問題が発生すれば、それに応じた応急措置としてなされる。それ自体、重要な論点を含むものではある。とはいえ、議会の大きな改革論議は、閉塞感が否めない。 
 振り返ってみれば、議会改革は、もしかすると2000年分権改革を契機に始まった改革運動の余波かもしれない。2000年分権改革によって、自治体の自主性・自立性が高まれば、自治体の独自の政策決定が重要になる。となれば、分権・自治の意思決定を担える議会の あり方が、大きくクローズアップされよう。自治体の自由度を増すことは、国の関与や規律密度を緩和する制度改革によって、可能になる。しかし、増した自由度を自立的に使いこなせるようにすることは、国の制度改革によってはできない。このため、自主的な営みである議会改革運動が登場する必然性があった。 
 とはいえ、2000年代の実際の動きは、必ずしも自治体の自主性・自立性・自律性を増すものとは限らなかった。むしろ、経済停滞や人口減少という縮減社会の中で、右肩上がりを前提にしてきた自治体運営それ自体が問われるようになってきた。そして、政治主導・官邸主導のかけ声のもとに、新たな権力を再結集した国の政権によって、集権的な介入は格段に強化された。もはや、「分権型社会」、「分権時代」とは誰も呼ばない。個別自治体は国の政策や制度に寵愛(ちょうあい)を求めて、翻弄されるようになった。縮減と集権の新たな時代状況の中で、自治体の立場からは、新しい課題を掘り起こすことが求められている。

終わりに

 そこで、自治体議会や議員が直面する問題について、新たな検討に舞台を変えようと思う。どのようなテーマがよいか、思案のしどころである。また、読者の関心があれば、それに応えることも大事かもしれない。ともあれ、少しお時間をいただき、新しい連載を再開すべく、ブレーンストーミングをしたいと思っている。これまで長期間の連載にお付き合いいただき感謝する次第である。そして、新しい連載で再び会える日を楽しみにしている。

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