2019.12.10 議会改革
第2回 議会改革の動き ─続くそのあり方の模索─
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
1 議会改革の動向
議会に対する期待と不満・不信が入り乱れ、議会を見る目が厳しさを増す中で、議会の側も、自ら改革に取り組んできている。
2000年代に入ると、改革に積極的に取り組む議会が現れるようになり(1)、議会の議決対象の拡大、議員提案条例の増加、質疑における一問一答方式の導入、議員間の自由討議、請願・陳情の審査の充実、通年議会制の導入、休日・夜間議会の開催、委員会の公開、議会情報の積極的発信、議会報告会や意見交換会の実施などの取組みが行われてきた。特に、改革の動きが全国的に広がるきっかけとなったのは、2006年に北海道の栗山町議会により制定された議会基本条例であり、同様の条例の制定の動きは全国各地に広がることになった。
議会自身によるこのような改革の動きは、従来においてはあまり見られなかったものだけに、評価されるべきだろう。その成果については様々な見方があるものの、これらを通じて議会や議員のスキルやレベルがアップしてきていることも確かだろう。
しかしながら、その一方で、そのような努力が議会に対する評価に結びついていない面がある。また、議会改革をめぐっては、自治体議会による温度差も目立ち、何も手つかずのところや、改革の余裕さえ失いつつあるところも見られる。改革に取り組んでも一過性のものに終わったり、息切れしたりしているところもある。
議会基本条例については、制定そのものが目的化し、制定しただけで満足してしまう議会も少なくなく、残念ながら、それがアピールやエクスキューズの手段となっているところも見受けられないではない。
改革疲れといったこともささやかれるようになり、議会改革については、踊り場にさしかかりつつあるようにも見える。また、議会基本条例の制定の動きが始まってから10年以上が経過し、議会基本条例ブームも一服しつつある中で、様々な課題も浮かび上がってきているといえる。
それらのことを踏まえつつ、議会改革について考え、取り組んでいく必要がある。
なお、議会改革をめぐっては、インターネットを通じて情報が発信されたり、大学の研究機関やマス・メディアによって全国的な調査が行われ、「議会改革度ランキング」などが発表されるなどしている。これらは、全国各地のそれぞれの議会が、刺激を受けたり、先進事例に学んだり、励みとなったり、自己評価などをする上で、有用なものとはいえる。特に、自治体議会関係者の間でネットワークなどが構築され、情報、ノウハウ、経験等を共有化することは大きな意味をもつといえるだろう。
ただ、その一方で、改革が外向きのものとなり、ランキングを上げたり、注目されたりすることが改革の目標・実績とされるような状況も見られないわけではない。改革は、それぞれの自治体において議会がその役割を果たすために行われるものであり、自治の向上につながるとともに、自治の本来的主体である住民の理解と支持を得ることが何よりも重要であることが忘れられてはならない。