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2019.11.25 議会改革

第1回 議会をめぐる状況 ─期待と不満の交錯─

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(4)住民意識の向上と政治主導
 第4は、住民意識や民主主義をめぐる変化である。
 地方選挙での低投票率の問題などはあるが、人々の価値観や住民の意識が多様化するとともに、その主権者意識も高まってきているともいわれ、それに伴い、住民は、自治行政に対する関心や要求を強め、そのあり方等について厳しい目を向けるようになってきている。その結果、住民から自治体のあり方や責任が問われるようになり、近年は、自治体の責任追及や透明性確保の手段として、住民監査請求・住民訴訟や情報公開請求・情報公開訴訟が活発に提起されるようになっている。
 議会も、住民の目というものを常に意識せざるをえなくなっているといえるだろう。そして、そこでは、「説明」や「対話」といったことを重視し、住民に対して説明責任を果たすと同時に、住民の多様な意見が議会の場に表出される仕組みをつくっていくことが必要となっている。
 他方、統治や自治のあり方として、官僚主導が批判されるとともに、政治の役割が強調され、政治の主導性が強まってきており、それが地方自治のあり方にも影響を及ぼしてきている。そもそも、政策決定ということでは、選挙で選ばれ民主的正統性をもつ政治が主体となることは当然のことであり、その点から、政治機関である議会のあり方が問われるとともに、二元代表制のもとで、長との間で適切な抑制・均衡の関係を築いていく必要がある。
 もっとも、政治主導をめぐっては、官僚批判や役人バッシングに傾斜したり、ルールや手続を軽視したり、個別的・具体的な執行への介入を強めるなど、誤った理解によるものや不適切な事例なども散見される。
 政と官の関係については、統制・分離・協働のそれぞれの規範に規定されることになり、いずれかに偏ることなくその調和を図ることが重要といわれ(8)、自治体においてもそれらに基づいた適切な関係が構築されていく必要があるが、自治体議会と職員との関係においては、長の存在も考慮するならば、協働ということも必要とはなるものの、分離と統制ということが基本となる。特に、政治の主な役割は、問題の提起、政策の方向付けと決定にあるのであり、当然のことながら、政治も、法治主義や行政の中立性の制約を受ける。利益誘導政治に対する批判も強まっており、政治主導においては、政治の側の自覚と姿勢も問われることになることが忘れられてはならない。

(5)ICTの発達
 第5は、情報通信技術(ICT)の発達である。
 情報通信技術の飛躍的な発展は、人々の暮らしや社会のあり方を大きく変えてきているが、自治や行政のあり方にも大きな影響を与えており、それへの対応やその活用が課題となっている(9)。また、それに伴い、自治体もインターネットなどを通じて様々な情報を発信するようになり、今や自治体の例規や政策などに関する情報が簡単に入手できるようになってきているが、そのことは、容易にその比較や検討がなされうることなどを意味することになる。自治体として外部の目を意識しなければならない状況がもたらされていることも、十分に認識しておく必要がある。行政サービスの効率的・効果的な提供という面でもICTの活用の重要性がいわれるようになっている。
 議会としても、ICTを活用して積極的に情報を発信し、その公開性・透明性を高めるとともに、多様な意見をくみ上げていくことが求められている。

(6)少子高齢化と人口減少の進行
 以上のような環境やニーズの変化は、自治体の意識改革や対応を迫るものとなっているが、それら以上に自治体に大きな影響を与えているのが、少子高齢化・人口減少の進行であることはいうまでもない。
 日本社会は、少子高齢化が急速に進み、人口減少社会に突入しているが、東京圏への一極集中も相まって、地方では人口の減少・流出による過疎化が進行しているほか、財政状況の悪化が進んでいる。
 例えば、2015年国勢調査によれば、2010年から2015年にかけてすでに1,367市区町村(全市区町村の81.3%)で人口が減少しており、また、国立社会保障・人口問題研究所の2018年の日本の地域別将来推計人口によれば、人口が減少する市区町村は、今後も増加し、2020年から2025年にかけては1,537市区町村(91.4%)、2030年から2035年にかけては1,615市区町村(96.0%)、2040年から2045年にかけては1,664市区町村(98.9%)となる。また、2045年の人口を、2015年を100としたときの指数で見ると、1,588市区町村(94.4%)が100未満であり、そのうち60~80が555(33.0%)、60未満が688(40.9%)で、全市区町村の73.9%で人口が2割以上減少することになると予測されている(10)
 住民構成ということでは、少子高齢化の進行による人口構成の変化とともに、国際化の進展や労働力人口の減少などを背景に、外国人住民の増加といったことにも目を向ける必要がある。
 いずれにしても、自治体を取り巻く状況は厳しさを増してきており、地方の活力がそがれ、各自治体は余裕を失いがちとなっている。現在の市町村のままでは、あらゆる行政サービスをすべて単独で提供することは困難となりつつある。
 これに対し、平成の大合併ということで、市町村の合併が積極的に進められ(1999年3月末に3,232であった市町村の数は2010年3月末には1,727に減少)、その規模が拡大してきた。その評価は分かれているものの(11)、自治体間の多様な連合・連携も含め、さらなる対応が必要となっている。
 このような状況をいかに克服していくのか、それぞれの自治体の意識や対応が問われているのであり、弱いところを切り捨てるような発想をすべきではないとしても、自治には、自己決定だけでなく、自己責任を伴うことになる以上、地域間の格差が拡大することは避けられなくなっているといえる。住民による自治体の選択(足による投票)についても、ある程度覚悟する必要があるのかもしれない。そして、今後の地域の状況と地方自治の多様なあり方を考慮した場合に、地域住民の要望に即応しうる能力をもつ総合行政主体としての地位をすべての市町村に画一的に要求することが果たして適合的・現実的かどうかといったことも考える必要が出てきている。
 従来の横並びの発想や護送船団的な考え方は、もはや通用しなくなり、自治体として何をしなければならないのか、何ができるのかということから、その主体的な判断によりその役割を絞り込むような発想へと転換することなども必要となってきているのではないだろうか。まさに、それぞれの自治力を問われるようになっているのであり、議会の側もそのことをしっかりと認識する必要がある。

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