2019.11.25 議員活動
市の職員が休暇中に県内で開催された政治家の年度初めのパーティーで乾杯の挨拶をした場合政治的行為の禁止に反するか/実務と理論
総務省自治行政局地域力創造グループ地域情報政策室 権藤裕樹
1 はじめに
地方公務員は、その政治的中立性を確保する観点から、政治的行為に一定の制約が課されているところである。そこで、本問では、その意図するところを踏まえながら、政治的行為に関する制約の具体的内容に関する検討を行うこととする。
なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
2 地方公務員の政治的行為の禁止の目的
地方公務員法(昭和25年法律261号。以下「地公法」という)では、公務員の政治的中立性を確保することを目的として、職員の政治的行為に対して一定の制約を課しているが、これは、①公務員の「全体の奉仕者」としての性格、②行政の中立性と安定性を確保すること、③職員を政治的影響から保護する、という三つの見地から要請されるものである。
一方で、すべての国民は集会、結社、言論などの表現の自由を保障されており(憲法21条1項)、また、国民は法の下において平等であり、政治的関係によって差別されることはなく(憲法14条1項)、地方公務員もこれらの基本原則の適用を当然受けるものであるから、「国民としての基本的な権利」と「公務員としての立場からの要請」の均衡が求められる。
これについて、判例によると、職員の政治的行為の制限は、公共の福祉の要請に基づくものであると同時に、職員の地位に内在する制約であると理解されており、政治的行為の制限はこのような趣旨を達成するために必要な範囲に限定されるものである。よって、公務員の政治的行為すべてを制限することはできず、法律が制限している範囲外の政治的行為を行うことは職員の自由である。
3 「職員」の範囲
地公法36条では、職員の政治的行為を禁止しているが、まず、ここでいう「職員」の範囲に、勤務時間外である等現在職務に当たっていない職員が含まれるか否かが問題になる。
この点について述べた「地方公務員法第36条の運用について」(昭和26年3月19日付け地自乙発95号)では、
① 現に勤務中の職員のみならず、休職、休暇中の者等をも含み、いやしくも職員たる地位を有する者すべてに適用されるものであること。したがっていわゆる「専従職員」も当然本条の適用を受けるものであることに注意すること。
② 職員は、職員たる地位を有する限り、その勤務時間の内外を問わず本条による制限を受けるものであること。
とされている。
このように、職員としての身分を有している限り、休職、休暇、職務専念義務の免除などにより職務に従事していない者も含まれ、また、勤務時間外に行った行為であっても、地公法36条の規定による制限を受けることとなる。