2019.09.10 議会運営
第3回 議会の意思決定
議会事務局実務研究会 野村憲一
団体意思と機関意思
合議体として「熟議」することが求められている議会ですが、熟議はその後なされる判断すなわち意思決定の正当性を担保するプロセスとして機能するものといえます。そこで今回は、議会の意思決定の話です。
議会全体の意思は本会議の議決で決まります。ここでいう「議会の意思」には、自治体という組織の中における議会の立ち位置に応じた二つのものがあります。
一つは、法人としての自治体の意思で、これを「団体意思」といいます。団体意思に関する議会の議決は、執行機関を含む自治体全体としての意思決定です。
団体意思に関する事件の典型は、地方自治法(以下「法」といいます)96条1項各号に掲げられており、条例の制定改廃(1号)、予算の制定(2号)、決算の認定(3号) などがあります。これらは議会の必要的議決事件といわれ、可決されると自治体全体の意思となりますから、これを対外的に示すのは当該自治体を代表する長です。例えば、議会で可決された条例は、それが議員発議によるものであったとしても、長が公布します(法16条2項)。
もう一つは「機関意思」です。自治体の中にある議会という「機関」の意思という意味で、文字どおり「議会はこう考える」というものです。機関意思には、議員の懲罰(法134条1項)や長の不信任(法178条)のように法的効果を持つものと、意見書の提出(法99条)や一般的な決議のように事実上の効果を持つにすぎないものとがあります。
侮るなかれ、機関意思
ここまで見ると、議会の意思決定には「軽重」があると思われる方もいるかもしれません。法的効果の有無という点だけを見ればそういう面もあるでしょうが、いずれの意思も、住民代表たる議員全員で構成される本会議の議決であるという点は変わりません。
例えば、決算案の審議中、ある事業の費用対効果の点について多くの議員から指摘があり、決算案の認定とともに「次年度の予算編成時には当該事業の見直しを検討されたい」旨の附帯決議が本会議で可決されたとします。附帯決議には法的な拘束力はありませんが、かといってその内容を無視すれば、次年度の予算案の審議が紛糾するであろうことは容易に想定されるでしょう。最悪の場合、予算案自体が否決されないとも限りません。
したがって、事実上の効果にとどまる機関意思といっても、「議会はこう考える」と自治体の内外に示されることによる「効果」は決して小さくありません。執行機関の職員も、このことは肝に銘じておくべきだと思います。