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2019.08.27 政策研究

二元代表制論を超えて

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二元代表制のイデオロギー性

 首長直接公選制・首長制などという用語では、首長個人が代表であるかどうかは、実は明らかではない。二元代表制とは、あたかも首長個人が議会や議員と異なる権限を持った代表であることを表現することに、何らかの意図が内包されている。
 選挙で選ばれた人間は代表である。だから議員は、代表である。しかし、議員=代表個人では、決定する権限を持たない。代表制が日本語で代議制とも訳されるのは、〈代表〉が〈議論〉するから代議制なのであって、ただ選挙で選ばれるだけで、議論しないのであれば、代議制にはならない。ここが代表制=代議制のもう一つのポイントである。選挙されるということと、複数が集まって議論するということと、二つの要件が必要である。
 選挙で選ばれた人間は代表である、というのは、正確には、代表たる必要条件を満たす、ということでしかない。代表たる充分条件は、議論することである。議論するには、独り言や自己内対話あるいは内省・夢などでは困る。つまり、議論するためには複数の人間から代表団が形成されるということである。つまり、代表たる複数の人間(議員など)が集まって代表機関を構成する。
 首長は選挙で選ばれた人間であるということにおいて、代表たる必要条件を持つ。しかし、首長は独任制執行機関としては、代表たることの充分条件を満たさない。したがって、首長が議会と別個の権限を持っているということだけでは、二元代表制とは本来は呼べないのである。にもかかわらず、あたかも選挙で選ばれたのだから、代表として、単独で、つまり、議論を抜きに決定できるかのごとく表現しているのが、二元代表制という用語のイデオロギー性なのである。
 首長は、議会の中で議論をしているときだけ、代表の充分条件を満たす。つまり、議会で質疑に、他の議員たちと対等な一議事者として参加しているときだけ代表である。しかし、首長が独自の執行権に基づいて決定しているのは、代表としての行動ではない。また、議会の決定に対して、個人の決定として再議を請求するのも、代表としての行動ではない。ただし、議会多数派が決定(議決・採決)によって議論を打ち切ることに対して、さらなる議論を求めるという一点において、首長の再議請求権は代表の行動につながる。つまり、議員多数派が議論をやめる、つまり、代表たることをやめる、決定しようとしたことに対して再議を申し立て、議員に代表たり続けることを求めるものである。
 つまり、二元代表制とは、独任制の首長が単独で決定することをも代表と位置付けるとするならば、間違った概念なのである。

議会強化と二元代表制論

 このような意味で、二元代表制とは、本来選挙された複数人が議論することで果たされるべき代表機能が、あたかも選挙されただけで、単独でも果たせるかのごとき印象操作をするイデオロギーである。要するに、議会に対して、首長の単独決定を擁護する政治用語である。このような、イデオロギー的な活動用語を使って学術研究をすると、無邪気なイデオロギーの垂れ流しになりかねない。
 とはいえ、議員や議会側は学術研究をしているのではなく、政治運動・政治活動をしているのであるから、イデオロギー的な用語を使っても、それ自体では問題はない。しかし、重要なことは、二元代表制とは、首長の単独行動に代表のオーラを付与するイデオロギーであることである。つまり、議会に対して首長の単独行動を強化する活動用語である。このような用語を使って、議会改革や議会の活性化を目指すのでは、全く方向が矛盾している。むしろ、首長は代表ではないとする一元代表制論こそが、議会が主張すべきスローガンであろう。

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