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2019.06.25 なり手不足

第12回 新たな住民参加型議会を模索~定数割れした山形県庄内町議会の議員のなり手不足解消策~

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【インタビュー】

石川保・庄内町議会議員なり手不足解消調査特別委員会委員長に聞く

 「庄内町議会議員なり手不足解消調査特別委員会」の石川保・委員長に話を伺った。
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石川保・特別委員会委員長


──どのようなことから特別委員会の設置に至ったのですか。
 昨年(2018年)6月の町議選が定数割れになったことが、きっかけです。定数割れ選挙は県内市町村で初めてです。5月の事前審査に来たのが16人でしたので(私も)無投票はあるかなとは思っていましたが、欠員が出るとは考えてもいませんでした。事前審査の後に2人が出馬を取りやめ、その後1人が急きょ、立候補しました。3人のベテラン議員が引退したのですが、その人たちが後継者を出せなかったことが大きかった。初めて選挙で欠員が生まれてしまい、議会全体に危機感が広がりました。
──欠員が定数の6分の1を超えて再選挙になっていたら、それこそ一大事でしたね。
 そうです。議員のなり手不足を解消するために議会として何ができるか、考えなければいけない、議論を重ねて(解消するための)答えを探りたいとなり、(全員協議会などでの協議を経て)特別委員会の設置(今年3月)につながったのです。それで名称もそのものずばりの「議員なり手不足解消調査特別委員会」に決まりました。
──庄内町では以前から議員のなり手不足が進行していたのですか。
 議員のハードルが高いという声はよく耳にしています。我々の議会は活動が活発でして、議員の活動日数も多くなっています。年間150日ほどで県内トップです。議員活動の質も高いと自負しております。議会広報活動で全国第1位になったこともありまして、議会関係者などからは高い評価を得ています。ですが議員報酬は月額21万5,000円で、県内で最低です。昨年、町の特別職報酬等審議会が議員報酬を24万円に引き上げるとの答申を提出しましたが、そのままとなっています。
──仕事量と報酬のバランスにも問題があるようですね。
 昨年6月に自民党の地方議会活性化会議に呼ばれて上京しました。議員のなり手不足が大きな課題として浮上し、地方議員年金の復活などが取りざたされた頃です。その場で私は「いろいろな地方議会があるが、なぜ、議員報酬にこれほどの違いがあるのか」、「町村議員だけが、なぜ、選挙公営の対象外なのか」といったことを訴えました。
──確かに地方議員の仕事内容や役割、責務は自治体の規模に関わりなく、同じです。自治体の規模や財政力によって議員報酬が違うというのは、おかしなことです。報酬は仕事に見合ったものであるべきでしょう。
 日頃から議員活動よりも選挙対策をしっかりやっているような人たちが当選しています。地域の集まりや行事にこまめに顔を出す人たちです。うちの議員たちはそういうことではなくて、本来の議員の仕事で忙しくしているのですが、町民からは「議員の顔が見えない」といわれてしまうのです。
──議会報告会などを開催していないのですか。
 毎年、町内7か所で実施していまして、平成25年度(2013年度)から名称を「町民と語る会」に変えました。さらに昨年度から形を変え、地区や各種団体からの要望を募って随時開くようにしましたが、地区からの申込みはまだ1件もありません。残念ですが、町民の議会への評価の表れなのかとも思います。どうすれば住民から議員の顔が見えるようになるのか、悩ましいところです。でも、何もしないと変わりませんので、具体的な行動に出ます。
──それで特別委員会が設置されたのですね。実際にどのような取組みを行うのですか。
 議員のなり手がなぜ不足するようになったのか、その原因を究明した上で対策を立てなければなりません。私は「議員の仕事とは何か、議会の役割とは何か」といったことを住民にしっかりと知ってもらうことが、何よりも重要だと考えています。ここから取組みを始めることが大事だと思うのです。
──なるほど。
 6月25日の午後から特別委員会の初会合が開かれます。議員6人で議論を本格化させますが、さらに公募などで町民6人を加えて「検討会議」を設置します。10月以降の立上げを目指しています。これと同時進行で進めるのが、参考人制度を活用した町民の議会への直接参画です。各定例会での特別委員会(予算・決算特別委員会を含む)に町民をお呼びして、意見を述べてもらいます。
──予算や議案などについて町民が本会議場で意見を述べるのですか。
 そうです。定例会ごとに公募や一本釣りで3人程度を想定しています。
 町長ら執行部も出席した議場での意見陳述となります。参考人は(執行部側などに)質問できないので、議員側から参考人に質問する形で議論を深められたらと考えています。議事録もしっかり残ります。町民は参考人になることで議員を疑似体験できるし、自分の意見を(執行部に)述べられます。9月定例会での実施を考えています。
──住民参加型の新タイプの議会といえますが、議会の中で異論は出ませんでしたか。
 最初の頃はありました。一つは、参考人制度を活用することが議員のなり手不足の解消につながるのかよく分からないという意見です。もう一つは、立候補者が少ないというのは自分とは関係ないこと。自らのライバルをつくるようなことを、なぜ、やらなければならないんだという意見です。しかし、今は全議員がこの取組みに納得していると思います。

 

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