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2019.06.25 なり手不足

第12回 新たな住民参加型議会を模索~定数割れした山形県庄内町議会の議員のなり手不足解消策~

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参考人制度を活用し、住民参加型の新しい議会に

 議員6人で構成する特別委員会を設置した庄内町議会は今年9月以降に、公募などで町民6人を加えた「解決策検討会議」を新たに立ち上げる。この検討会議がグループワークやワールドカフェ方式などで幅広く町民の意見を聞き、その成果を報告書として議会に提出する方針という。住民参加による議員のなり手不足解消策の策定を目指すのである。
 さらに、もう一つ、ある画期的な取組みが進められていた。地方自治法に規定されている参考人制度の活用である。できる限り多くの町民を参考人として議会に招き、予算や決算、政策課題について意見を述べてもらうという。本会議場で開く予算・決算特別委員会の場を想定したもので、一般住民が議会に直接参加する斬新な試みといえる。町政について一般住民が自由に意見を述べるとともに、議員を疑似体験するのである。議会や議員の役割の一部を担ってもらい、さらには議会や議員が地域住民にとって身近で重要な存在であることを認識してもらいたいとの意図からだ。いわば「住民参加型」という新たな議会像を模索する取組みである。

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庄内町議会の本会議場。議員同士が向かい合う珍しい馬蹄型。

 庄内町議会はこうした一連の取組みを6月定例会以降、より具体化させる方針だ。そのための事前協議が6月3日の議会運営委員会(小林清悟・委員長)でなされると聞き、現地取材に飛んだ。
 庄内空港からリムジンバスに乗り、JR酒田駅へ。そこから羽越本線の各駅停車に乗車し、四つ目の余目駅で下車。閑散とした駅前通りを右折して10分ほど歩くと庄内町役場に到着した。議会運営委員会は庁舎3階の小さな会議室で、午前9時半から始められた。委員6人(石川副議長もメンバーの1人)に吉宮議長、それに議会事務局職員が加わった。

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吉宮茂議長

 住民参加型議会の取組みが議題となったのは、時計の針が午前11時を回ってからだった。冒頭、小林委員長が参考人招致についての検討状況を説明した。ざっとこんな内容だった。参考人招致は1日最大で3人、2日間として最大で6人を想定。本会議場で開く「予算・決算特別委員会」で実施する。参考人の発言時間は1日1時間とし、発言者数で案分してそれぞれの持ち時間とする。参考人が自由に発言した後に各議員が質問し、それらの内容を盛り込んで執行部への質問や提言を行う。各参考人に担当議員がつき、事前準備の助言などを行う。担当議員は参考人との窓口であり、発言後のフォローは議会全体でしっかり行う。
 議運の小林委員長はこうした説明を行った後、「参考人の登用発掘をどうするかが、最も重要です」と力を込めた。こうして会議は本題へと移り、様々な意見や問いかけが飛び交った。誰もが真剣な表情で語り、また、耳を傾けていた。「将来議員になってもらうために参考人として呼ぶというのは、違う。それでは負担が大きすぎる。まずは経験してもらうことです」、「議会全体で取り組まないといけない。全議員が参考人の候補者探しを担うべきだ」、「最初から1人、2人に絞るのではなくて、30人ぐらい(参考人候補者の)リストアップをしておくべきだ」、「参考人の得意分野にあった議員を担当にした方がよい」、「消防団や農業関係、福祉や教育、商工会などいろいろなところに声掛けしよう」、「(参考人として発言する人を)どこが最終決定するのか、どういう基準で決めるのか」などなど。

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議会運営委員会。右端に座っているのが小林委員長。

 一般町民を参考人として議場に呼んで意見陳述してもらう、それも、定期的に実施するというのは、おそらく日本の地方議会で初めての試みであろう。検討の上に検討を重ねて前に進むしかないのだが、庄内町議会は9月定例会でのキックオフに向けて動き出している。退路を断ち切り、試行錯誤しながら前進する道を選択したのである。議員のなり手不足に嘆き、悲しみ、右往左往するだけでは地域の未来は切り開けないとの強い危機感からだ。
 この日の議会運営委員会は、次回(6月25日午前)の会合で各委員が声掛けした参考人候補者リストを出し合うことを決め、お開きとなった。

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