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2019.06.25 なり手不足

第12回 新たな住民参加型議会を模索~定数割れした山形県庄内町議会の議員のなり手不足解消策~

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地方自治ジャーナリスト 相川俊英

 総務省が地方議員のなり手不足対策をテーマとする新たな検討会を立ち上げるという。今年4月の統一地方選で無投票や定数割れの議会選挙が相次いだことを深刻に受け止めての動きであろう。このまま何も手を打たずにいたら、地方議会選は無投票や定数割れにとどまらず、欠員が定数の6分の1を超えて再選挙となる事態が各地で頻発しかねない。それほどまで地方議員のなり手不足は深刻化しており、地方自治の根幹が崩れつつある。とはいえ、なり手不足解消の特効薬などあろうはずもなく、様々な策を地道に講じるしかすべはない。だが、あれこれ妙策を思案する前に熟考せねばならないことがある。それは、なぜ、地方議員のなり手が激減するようになったのか、その真の要因を解明することである。ここで少し持論を展開させていただきたい。
 地方議員のなり手不足は二つの要因が絡み合ってのものと考える。一つは、議会・議員の役割や存在意義が住民に見えにくくなっていること。何をしているのか、何のために存在するのか、そして、地域や自分たちの役に立っているかが、見えにくくなっているのである。その一方で、特定・特別な人たちしか議員にならない、そして、なれないような環境や仕組みができ上がってしまっている。この二つの要因は卵と鶏の関係にあり、マイナスの相乗効果を生み、かつ、拡大させている。その結果として、議会・議員が一般住民から遊離した遠い存在になってしまっているのだ。一般住民にとって議員は身近な存在にも、信頼に値する存在にもなりえていない。地方議会は巨大な負のスパイラルに陥ってしまっている。
 また、地方議会・議員と一般住民の関係が疎遠なものになれば、本来の役割・仕事をきちんと果たそうと奮闘する議員ほどつらい思いにさいなまれる。議員個々の働きぶりが住民にチェックされず、どんなに頑張ってもきちんと評価されにくいからだ。もちろん、実際には逆のケースが圧倒的に多い。議員を名誉職の一つと捉えたり、地域や団体内の上がりのポストとしてその座についた人たちが、住民の無関心をよいことに楽隠居を決め込んでしまうのである。優雅な議員生活を謳歌(おうか)する人たちが本来の議会・議員の役割を果たせるはずもない。つまり、地方議員のなり手不足とは量のみならず、質の面でも深刻化しており、定数さえクリアできればよいという類いのものではない。

活性化した議会もなり手不足に苦しむのはなぜか

 「ウチの議会選挙で欠員が出るなんて誰も思っていませんでした。それで大慌てとなりました」
 こう振り返るのは、山形県庄内町の石川保・副議長。町議会が今年3月に設置した「庄内町議会議員なり手不足解消調査特別委員会」の委員長も務める。
 庄内平野のほぼ真ん中に位置する庄内町は、人口2万1,666人(2015年国勢調査)。2005年7月に余目町と立川町が合併して生まれた町で、月山を水源とする立谷沢川に沿った南北に細長い地形である。町域の約6割を山林が占める庄内町の基幹産業は農業で、中でも米づくりと花卉(かき)栽培が盛んだ。町の財政力指数は0.31(2017年度)である。
 庄内町議会は議員定数16で、会派はなし。四つの常任委員会(議会運営委員会を含む)を16人でこなしている。議員報酬は月額21万5,000円で、期末手当を加えた年俸は348万3,000円(議員報酬は山形県内で最も低い)だ。庄内町議会はごく一般的な地方議会といえるが、議会活動は極めて活発だ。定例会ごとにほぼ全議員が一般質問するのが通例(2019年の6月定例会では11人が一般質問した)で、本会議や委員会、協議会などの開催延べ日数は年間153日に上る。山形県内の町村議会の平均延べ日数が91.5日なので、その約1.7倍に当たる。閉会中の調査活動も活発で、2013年に町村議会広報全国コンクールで全国1位を受賞するなど、議会関係者などから高く評価されている。
 そんな庄内町議会が昨年6月の町議選で不名誉な事態に見舞われてしまった。立候補者が定数を満たさず、欠員1という定数割れになってしまったのだ。庄内町の町議選はこれまで無投票とは無縁であった。2006年の町議選は定数20に対して26人が立候補し、投票率は80.62%を記録した。2010年は定数18に対して19人が出馬し、投票率は72.31%。2014年は定数16を18人が競い、投票率は67.21%だった。過去3回はいずれも選挙戦となっており、なり手不足とは無関係だと思われていた。ところが2018年の町議選でよもやの無投票、しかも山形県内の市町村議選で平成以降、初めてという定数割れとなった。小さな町の中を大きな衝撃が走ったのはいうまでもない。
 庄内町議会の吉宮茂議長は「議会の活性化に向けて一生懸命やってきたのですが、住民の皆さんの(議会に対する)見方は違っていたのかと思いました」と、当時の心境を語る。そして、こんな打ち明け話をしてくれた。「議会改革のトップを走る自治体の議長さんが“議会が活性化すればするほど、議員のなり手が少なくなってしまう”とこぼすのを耳にしたことがあります。今になって“なるほどな”と思うのです」。
 深刻な議員のなり手不足が表面化したことに庄内町議会は危機感を抱き、対策に乗り出した。議員全員参加の学習会や全員協議会などで話合いを重ね、今年3月の定例会で「庄内町議会議員なり手不足解消調査特別委員会」の設置を決めたのである(設置までの経緯や活動内容などについては石川保・特別委員会委員長のインタビューを参照)。

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