2019.06.25 議員活動
後援団体が商店街の協賛を得て提示すると割引サービスが受けられる会員証を作成し会員に無償で交付できるか/実務と理論
5 設問の検討
(1) 設問における会員証による割引サービスは「寄附」に該当するか
後援団体に所属している会員が協賛商店で会員証を提示することで割引等のサービスが受けられるということは、サービス券を交付することと同じ意味を持つものと考えられるところである。
サービス券については、通常の定価が定まっている場合にその定価を支払わずサービス券に記載された金額を差し引いた通貨を支払うことで購入できるものや、他の財産的利益のある物品が無料で供与されるもの等種々の形態が考えられるが、一般的なサービス券は一種の金券に相当するものと考えられ、当該サービス券と同様の効果を持つ会員証を何ら対価なく贈呈することは寄附に該当するものと考えられる。
(2)協賛である商店街がサービスを提供することと寄附
設問においては、会員証の提示により割引サービスを提供するのは後援団体ではなく協賛を募った商店であることから、後援団体から会員に対する寄附ということができるかどうか検討が必要となる。 この点、民法(明治29年法律89号)86条3項が「無記名債権は、動産とみなす」と定めているところ、サービス券(会員証)のような無記名債権は動産とみなされ、物品に当たるものであることから、実際にサービスを提供する主体(協賛する商店等)にかかわらず、サービス券(会員証)を提供する主体(後援団体)が寄附の主体になるものと考えられる。
(3)設問への当てはめ
以上を踏まえれば、サービス券と同様の効果を持つ会員証を交付する主体が、特定の公職の候補者等の支持・推薦をその政治活動のうちの主たる部分とする後援団体であれば、選挙区内にある者に対して無償で会員証を交付することは法199条の5に抵触するおそれがある。
なお、会員証を交付する主体が一般の政党支部であるような場合については、前記のとおり法199条の5に規定する「後援団体」に該当しないが、公職の候補者等が当該政党支部の役職員又は構成員である場合で、かつ、当該公職の候補者等の氏名を表示し、又は氏名が類推されるような方法で選挙区内にある者に対して無償で会員証を交付した場合は、法199条の3に抵触するおそれがある。
6 おわりに
以上、寄附の禁止の観点から、後援団体の日常の活動における留意事項について、近年の実例をもとに解説した。本問が、法が定める「後援団体」と「寄附の禁止」に関する整理の一助となれば幸いである。