4 条例審査の視点
条例審査では、これまで述べたような事項について、やみくもに粗探しをするわけではありません。例えば、条例審査を実践的・効率的に行うために、次のような具体的な場面を想定し、それぞれの場面に即した視点で審査を行うというやり方があります。
(1)議案審議
条例の適切性が試される最初の場面は、議会の議案審議です。ここでは、議会の議員から、条例案に関する基本的な事項(立法事実、法令・政策との整合性、パブリックコメントの結果など)を中心に質疑がされます。
そこで、この場面については、条例案の基本的な要素に見落としがないかという視点に立って条例審査を行います。
(2)適用場面
条例の内容や運用方法が偏っていると(あるいは、偏って見えてしまうと)、実際に条例を運用する場面で住民や事業者に不公平感を与えてしまい、その理解と協力を得ることができず、結果として期待した成果を上げることが難しくなってしまいます。
そこで、この場面については、条例の適用を受ける住民や事業者の視点に立って条例審査を行います。
(3)争訟場面
条例の運用に対して審査請求や行政訴訟が提起され、「条例に基づく処分は不当である」、「条例は違法・無効である」との評価を下されると、自治体にとっては、条例に基づく処分の取消しを命じられ、多額の賠償の支払を求められ、長や職員個人の責任が追及され、報道等により社会的イメージが低下するなど、有形無形の大きなダメージが残ります。また、条例を可決した議会にも非難が及ぶ可能性もあります。
そこで、この場面では、条例が審査庁や裁判官による法的な判断にも堪えられるかという視点に立って条例審査を行います。