地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

新人議員が聞きました「教えて!先輩」

2019.04.25 仕事術

新人議員が聞きました「教えて先輩!」 1年生「議員」の壁~議会の心配、不安を乗り越えよう~(下)

LINEで送る

都市部の人口減少に歯止めを(三雲)

三雲 それができる環境というのは、やっぱりずっと住み続けられるからですよね。新宿の場合は、人口の流動性が高く、ひとり暮らしの世帯が多い。新宿の人口をグラフ化すると、矢印型なのです。20歳前後で大学や専門学校に通う何年間か住んで、結婚してまだ住んでいますが、子どもが生まれると出ていってしまう。
 おそらく若い人たちも、自分たちが住み続けられるならば、このまちをこうしたいという思いがあると思うのです。でも5年後に自分がいないまちについて、いくら議論してもしようがないと思ったら、投票には行かないですよね。だから投票率を上げることも大事ですけれど、共同体としてまちが存続できるようにすることが重要だと思っています。
 都市部に共通した問題ですが、結婚して子どもを育てられる環境をつくるには、大学生になって初めてやってきた人たちが定着できる施策が必要になります。経済的な支援が柱になりますが、それはおそらく、高齢者の方々にとってはあまり関心のないお話になるでしょう。
 しかし、未来のためにどのタイミングで、どう必要性を訴えていくか、こうした課題を慎重に問題提起していきたい。これも長い目で見た私の目標です。
(編集部) 松野さん、皆さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。
 全国の新人議員の皆さん、次の主役は皆さんです。ご活躍を期待しています!

先輩からのアドバイス【座談会を終えて】
今回、座談会にご参加いただいた議員さんたちは、偶然でしたが、以下の3つの共通項がありましたね。①子育て世代、②落下傘候補、③ビジネス経験者。さらに皆さん、とても真摯に議員活動に取り組まれているという点でも共通しているなと感じました。
 議会では、本会議や委員会の終了時刻が分からないとか、文書で配布される大量の資料や、法令や行政用語特有の言い回しなど、ビジネスの経験者として役所の常識、社会の非常識ギャップにも、びっくりする日々を送っていることと思います。
 しかし、新人議員が、いきなり行政の専門知識を身につけようと思って必死に勉強しても、とうてい職員の知識にかなうわけがありません。職員数と議会の議員の数と、数の上でも比較になりませんよね。むしろ、議員はあまり完璧主義でない方がよいと私は思います。私も1期目のとき、恩師からよく「行政のプロフェッショナルになろうとするな! 市民目線のプロフェッショナルになれ!」と言われ続けました。議員は、やっぱり普通の市民の感覚を持ち続けることが大切です。
 冒頭に荻野さんが、会派の先輩議員から「ちょっと言い過ぎ」と注意されたとおっしゃっていましたが、先輩議員から少しお叱りを受けるくらいの感覚を大事にされた方がよいと思います。逆に、新人議員の強みは、まだ業界に染まっていないぶん議会の常識、社会の非常識のギャップや市民感覚が備わっていることです。長い間、議員をやっていると、だんだん職員の立場、議会の立場が分かってきてしまうので、むしろ市民に対して、「いや、それはこういうことじゃないんだ」と言い訳をするようになってしまうのです。
松野豊さん松野豊さん  執行部に対して無駄に圧力をかける必要はありませんが、しかるべき余裕をもって資料を請求しても、のらりくらりとした対応できちんとした回答をしない職員や、市場価格より明らかに高額なパソコンを購入している事例など、普通の市民感覚から「おかしい」と感じたことには、はっきりと「真面目にやりなさい!」と議員が「叱る」ということも、ときには必要かなと思います。職員からは、うるさい議員だなと思われるかもしれませんが、議員が厳しく問い質(ただ)すことで、なかなか前に進まなかった事業が、一歩前に進んでスピードアップすることもあります。また観点を変えて一介の職員からすると、自分自身がかつて提案して役所の上層部から却下された案件でも、議員さんが「なぜこの政策をもっと早くから進めなかったのだ!」と怒っているということを理由に上司を説得し、事業を前に進めたり、効率化を図ったりすることができるケースもあったりするのです。
 新人議員の皆さんが初志を貫徹され、それぞれの議員としての夢が実現に導かれますよう衷心よりお祈り申し上げ、今回の結びに代えたいと思います。ありがとうございました。(松野)

 


 

〈プロフィール〉
◆新人議員◆(五十音順)

20150825_6_a_1

荻野健司 おぎの・けんじ
世田谷区議会議員(自由民主党世田谷区議団)。1975年生まれ、40歳。早稲田大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。IT系ベンチャー企業の役員等を経て、ウェブコンサルティング会社を経営。家族は、共働きの妻と6歳と4歳の男の子2人。趣味は、マラソン、スキューバダイビング、サッカー観戦、育児・家事。父親育児支援のNPOファザーリングジャパンに所属。NPOハウスキーピング協会認定講師の資格も持つ。
http://www.oginokenji.jp/
@ogino_kenji

20150825_6_a_2

近藤美保 こんどう・みほ
流山市議会議員(無所属・流政会)。東京都立大学大学院建築学卒。都内のITエンジニアリングコンサルタント会社に就職。子どもを産んでも仕事は続けたいと考え、都内の子育て環境を調べていた矢先、待機児童問題の深刻さ等を目の当たりに。安心して子育てができる環境を期待して、第一子出産と同時に流山市に転入。本格的に働き始めたら地域にお世話になるからと、第二子の育児休業中にボランティアに従事。地域には様々な課題があることを知り、市議会に挑戦。家族は娘のキャラ弁づくりもこなす夫と6歳と4歳の子ども2人。
http://mihokondoh.net/
@lovehona

20150825_6_a_3

三雲崇正 みくも・たかまさ
新宿区議会議員(民主党・無所属クラブ)。1977年生まれ、38歳。東京大学法学部卒業後、「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」に勤務し、金融規制、会社法務やコンプライアンス等の法務を手がける一方、第二東京弁護士会の人権擁護活動に取り組む。2011年から2013年にかけて、英国エジンバラ大学ロースクールに留学。帰国後、前衆議院議員・海江田万里氏の政策担当秘書を経て、「三雲崇正法律事務所」を開設。刑務所の医療問題やヘイト・スピーチ問題等に取り組むとともに、地域の人々のための弁護士としても活動中。家族は妻と子ども2人。仕事好きで事務所からなかなか家に帰らないと言われるのが悩み。
http://mikumo-t.tokyo/profile.html
https://www.facebook.com/mikumo.takamasa
@TakamasaMikumo

◆アドバイザー◆

20150825_6_a_4

松野豊 まつの・ゆたか
前・流山市議会議員。1969年生まれ、45歳。麗澤大学地域連携センター客員研究員、NPO法人ドットジェイピー顧問。現職時代には議会基本条例策定特別委員長、議会運営委員会委員長、議会活性化推進特別委員長、広報広聴特別委員長、その他ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟初代共同代表、せんたく「地方政府創造会議」議員連合事務局長補佐などを歴任。1988年麗澤高等学校卒業、株式会社リクルートに入社。企業の人材採用戦略立案や組織風土改革に従事。1999年、29歳で流山市議会に初当選。2017年5月、議員活動を「卒業」。現在の関心事は子育てと地域や組織の活性化をはじめ、人間力を起点とした人材育成。
http://matsunoyutaka.jugem.jp/
@matsunoyutaka

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 615

東海道線特急運転開始(大正元年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る