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2019.03.25 議会改革

議選監査委員制度廃止なら、実地検査権を条例化すべき(その4・完)

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監査委員を選挙で選ぶという方法もある

新川達郎(同志社大学教授) 監査委員という仕組みをどう考えるのか、もう少ししっかり議論する必要がある。何となく、監査は執行機関という位置付けがされがちだが、制度の趣旨からすれば独立監視機関、規制機関であるので、そういう位置付けから考えるなら、内外(ウチソト)という議論ではない。
 併せて監査委員は、独任制の機関になっている。監査委員になる人の人格、識見、専門能力がトータルに働いて監査の仕組みは動いていくということ。いってみれば属人的な仕組みで、首長を選ぶのと同じである。監査委員の仕組みを本当に動かすなら、きちんとした人になってもらうことが重要だ。
 議選監査委員の議論で気になるのは、自治体経営や運営に関する情報を、議選監査委員が議会内で補っているという話である。しかし、現状の議会の権限や個々の議員がそれぞれ有している市民・住民としての権利を十分に行使すれば、ある意味、議会の調査権限を補強する活動は、議選監査委員からの情報に頼らなくてもできるはずである。そういった点について体系立てて整備しようとする努力が、まずは足りないのではないか。
 現状の議選監査委員制度は、執行機関から見ても議会から見ても、位置付けが曖昧で、制度本来の意味が生きていない。議選監査委員が、監視機能を果たせていないとなると、議会の内部統制はどうなっているのかという議論にもなる。議選の監査委員はどちらでもいいというのが、今のところの見解である。
 独立監視機関を民主的に機能させていくのであれば、議論はあるが選挙制度が最も客観的な方法だと思う。要するに監査委員も選挙で選任すべきということだ。

伊藤真一(東村山市議会議長) 東村山市議会で議長をしている伊藤です。私は、いきなり2期生で議選監査委員となった。銀行検査部にいたから専門性があると思われたのかもしれない。
 廣瀬先生から、制度論からいうと大手術が必要とのお話があった。私は、監査委員は議選監査委員に限らず、全て議会議長が任免するべきと考えている。制度全体のあり方を検討するべきなのに、なぜ議選監査委員だけ取り上げて批判するのか。
 幸田先生がおっしゃるように、不正防止の観点からすれば、法律家の視点がもっと入った方がいいのではないかと思っていた。議会は予算・決算だけを見ていて、資金フローは見ていない。つまり、財政当局とは向き合っても、会計当局とは向き合っていない。振替運用や一時借入れなどは決算には出てこないので、監査委員でなければ見ることができない。議会が自ら、会計についての情報入手経路を絶つべきではないと考えている。
 制度としての問題は認識しているが、我が市では必要であると考えている。監査委員に報告される問題を黙認し続けていると大事故につながる。的確なアドバイスができる人を選任すべき。議選監査委員不要論から、ひいては議会不要論につながっていく。守秘義務については守らないと、次に執行部から情報がこなくなる可能性がある。信頼性を保つためにも、守秘義務は守る必要がある。
清水 古い制度なので、小手先の改良では対応できない。機能論については、議会からは発信できるが、執行部がイニシアチブをとって改善しようとすると、議会から越権行為と指摘される可能性が大きい。実地調査権も条例でできないことはないが、実際には付随する膨大な事務が発生する。実地検査権も法律で位置付けてもらわないと、人の配置がなされない可能性が高い。条例での対応の場合は、人を増員してもらえる可能性が低い。そういう点から考えると、実地検査権の条例制定は、机上の空論である。大津市議会の場合は、法律改正を伴わない、現行制度でできる範囲の代替措置をとっているので、どうしても弱く見えてしまう。

廣瀬 現実にある制度は、しばしば過去の経緯で矛盾が生じているが、そこを運用でカバーしている。そのせめぎ合いなのではないか。学校法人も監事の機能の実質化が求められている。外部のOBではない人間の一定数の確保が文部科学省からも求められており、弁護士や公認会計士の配置など、外形的に満たすことは難しくない。しかし、学校法人の業務に精通した弁護士や公認会計士の確保は、実際には難しい。現実には、業務に精通している公益法人の監事経験者が活躍している印象である。
 財務的アカウンタビリティについては、弁護士や公認会計士は見識を有しているが、法人の業務についての適正な判断、つまりこのまま事態を放置した場合の将来的な悪影響を予見し、あらかじめ注意を促すことなどは、その法人固有の業務経験が必要である。そういった点からも、トラブルシューティングをこなしてきた監事経験者は監事に必須である。財務的な側面以外にも豊富な実務経験に基づく鋭い指摘を監査として行うことができる人材の母集団を準備することも、自治体の監査を実態面で機能させていくためには重要ではないか。いうまでもないが、制度の問題を看過して、運用の解決だけで済ましていいわけではない。

幸田 独立性は重要。職員OBが監査委員になることは、一概に悪いとはいえない。監査事務局の共同設置はありえる。監査事務局の職員が熱心ではないなら、議会から指摘すべきである。法律の義務付けには反対。法律の義務付けではあまりいい結果にならない。議選監査委員が役割を果たしていないことがやはり問題。任命の段階からやはり見直していくべき。

江藤 監査機能の充実と、議選監査委員をどうすべきか、議論を深めていく必要がある。監査委員の選挙による選任など、大きな改革も議論するべきだろう。議選監査委員の選出の基準はどのようにするべきか、会津若松市では議長の選任の基準を磨いてきた。監査事務局の出向元に対する対応もどうすべきか。守秘義務を広く捉えるのではなく、ある程度、住民に開かれたものにすべき。監査専門委員を活用する制度設計もすべきだろう。

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