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2019.02.12 政策研究

第11回 議会が無作為抽出型の住民協議会を主催する~岡山県新庄村~

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 再開後はコーディネーターの伊藤さんの進行で本題に移った。テーマは、老朽化した村役場庁舎をどうするか。その論点は、建替えか改修か、ないしは別の場所に新設するかである。冒頭、ある住民から「予算のことを考慮しなくてよいのか」との確認の質問が飛び出した。伊藤さんが参加者に「コストを考えずに自由に意見を出し合う場」であることを伝えると、住民はそれならばとばかりに自らの考えを語り出した。「今の役場は(村内でも)ベストの場所にあると思います。新しい役場を別のところにつくり、今の場所の活用を考えた方がよいと思います」。これに呼応するように別の住民も「あそこは雪も少なく、皆が集まりやすい場所です。役場には用事がないと行かないので、皆が使うものをつくった方がよいと思います」。いずれも利便性の高い場所にわざわざ役場を置くことはないという率直な意見だった。これに対し、「集まりやすい場所にあるので、そこに新しい庁舎を建てる方がよいと思う。イメージのよい建物を」との意見も飛び出した。いずれも遠慮や忖度(そんたく)なしの発言で、聞いていて爽快だった。別の男性が伊藤さんに意見を求められ、口を開いた。「今いる人たちが豊かに暮らせることが一番大事だという福嶋先生のお話、全くそのとおりだと思います。何でもありというこれまでの発想を変え、ないところからどうやってやるか具体的に進めていただきたい。私は役場の建替えはしてほしくない。ふれあいセンターを防災拠点にし、役場をがいせん桜通りに分散させる。今の庁舎は駐車場にしてはどうかと思います」。
 いきなり役場分散という大胆な案が提示され、場の雰囲気は熱くなった。進行役の伊藤さんも全くの想定外だったのか、高揚感を隠せずにいた。うれしそうな表情で選択肢を4つに整理して改めて住民に説明した。こうした住民協議会でのやりとりは、マイクを通さずに肉声のみで進められた。伊藤さんによると、マイクを使うと誰もがよそ行きの発言になってしまいがちなので、あえて使わないという。それだけではなく、マイクなしの方が参加者に気軽に話を振りやすいという利点もあるように感じた。伊藤さんは実に巧み、かつ的確に住民から率直な意見を引き出していた。聞き上手であり、まとめ上手なのである。自らの考えを押しつけることはせず、話合いの内容に沿った客観情報を手持ち資料なしでその場で的確に示せる人物だった。

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