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2019.02.12 政策研究

第11回 議会が無作為抽出型の住民協議会を主催する~岡山県新庄村~

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熟議の場となった“村づくり自分ごと化会議”

 村議会主催の住民協議会は、村役場庁舎近くにある公民館の大会議室で行われた。2回目となるこの日の参加者は、住民委員12人と議員7人、それに数人の村職員と傍聴者が2、3人。午前9時半、新庄村の辻るり・議会事務局長の挨拶で住民協議会は始まった。最初にコーディネーターの伊藤さんが前回会議(参加した住民委員は15人)の内容を振り返った上で、この日の話合いのポイントを説明した。老朽化した役場庁舎(1969年竣工なので築50年)に耐震強度の問題があること、仮に建て替えるとしたら、どのような場所に、どのような雰囲気の役場にしてほしいか、そして、役場庁舎の機能をそもそもどのように捉えているかなどである。その後、ナビゲーターとして参加した福嶋さんが公共施設のあり方全般について、問題を提起した。それはこんなマクロの話から始まり、参加者全員が真剣な表情で耳を傾けた。

Jichinoninaite11_ph02村づくり自分ごと化会議。正面右が福嶋さん、左が伊藤さん。

 「日本は人口減少社会に入っています。子どもを産む世代の人口が減っているので、どんなことをやっても人口減は続きます。そういうときに我が町の人口減を少なくするには、どこかの町の人口をより減らすしかなくなります。ですが、そうした人口の奪い合いをしても地域の未来はありません。そういう発想を変えることが大事です。人口が減っても持続可能な地域にする、そういう仕組みに変えることです。ただ小さな町が大きなところから人口をとってくることはありだと思いますが、それには今住んでいる人たちが楽しく豊かに生活できているかどうかが大事です。それが実感できたら、外から入ってくる人は自然に増えると考えます。今、住んでいる人が幸せに暮らせる仕組みに変えることです。小さくして、質を高めることがポイントです」
 人口減少社会に見合った施策に転換する必要性を訴えたのである。福嶋さんの説得力ある指摘に、住民委員たちはしきりにうなずいていた。首長(千葉県我孫子市長)を3期12年務めた経験のある福嶋さんは、この日のテーマである公共施設の話へと展開させていった。
 「公共施設もそうです。これから建替えの時期がやってきますが、同じように建て替えるお金はありません。それは無理です。ではどうするか。量は減らすが、質を高めて機能を維持する方法を考えるのです。一般論として、自治体全体として使っているような大きな施設は、周辺自治体と共有します。一方、地域レベルでは複合化や多機能化を進めます。例えば、学校です。学校を地域みんなの総合拠点と捉え、いろいろな施設として使えるようにするのです。しかし、そのど真ん中に子どもたちを置きます」
 福嶋さんは我孫子市長時代に取り組んだ施策を具体的に示しながら、本題である役場庁舎の話を切り出した。
 「役場を建て直すケースで、今ある別の老朽化した施設を一緒にして複合化するのはよいと思いますが、複合施設にするために何か新しい施設も加えるというのは本末転倒です。それでは公共施設を無理やり増やすことになります。それから、役場に住民がたくさん来るように別の機能(カフェや食堂、サロンなど)を付けるのも私はどうかと思います。役場が住民の集まる場所になるには、役場の仕事ぶりが変わらないとダメだと考えるからです。役場が、住民がいろいろ相談したくなるような存在になっていれば、住民は自然と役場に行くものです。そうなっていないのに、無理やり役場に人を集めるようなことが本当によいのかどうか考えるべきだと思います」
 福嶋さんのナビゲーターとしての問題提起が終わり、ここで10分間の休憩となった。お茶やトイレ、一服などのために席を離れる住民たちの表情から充実感が漂っていた。

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