2019.02.12 政策研究
第11回 議会が無作為抽出型の住民協議会を主催する~岡山県新庄村~
新庄村の住民協議会に関心を持ったのは、3つの理由からだ。1つは議会の主催であることだ。無作為抽出による住民協議会を議会として開催するケースは、これまで1つもなかった。それはなぜか。そもそも議員たちの間に選挙で選ばれた自分たちこそが民意を代表し、反映させる唯一の機関であるとの強い自負があり、わざわざ見知らぬ一般住民の意見を聞く必要はないという意識があるからだ。また、会派間や議員間の対立、足の引っ張り合い、思惑の違いなども加わり、自分の支持者以外の住民の前に出ることを議員らは敬遠しがちである。そういう場に出席しても選挙に好影響をもたらさず、かえって得票を減らすことにつながりかねないと尻込みしてしまうのだ。そうした地方議会・議員の実態を見せつけられてきたからこそ、新庄村議会の取組みに関心を持ったのである。
2つ目の理由は、住民の応募率(参加率)の高さと参加者の多様性である。新庄村議会は選挙人名簿から年齢や性別を考慮しながら、無作為で120人の住民を選んで住民協議会への案内状を送ったところ、16人(その後17人に)が参加を希望した。応募率(参加率)は13.3%に上り、「構想日本」がこれまで運営支援した住民協議会の中でも最高の数値となった。また、参加希望者16人のうち女性が6人で、さらに40代以下が57.1%を占めていた。Uターンした子育て世代や村役場職員、移住して店を営む人や大学生、農業や林業に従事する地元出身者、さらには地域おこし協力隊員と、実に多種多様な住民が一堂に会する場となった。その上、コーディネーターとナビゲーターもこれ以上ない最高の布陣となっており、住民の関心の高さや熱意と相まってどのような話合いが展開されるのか、興味津々だった。行政などがよくやるアリバイ的で、形式的で、面白味に乏しい予定調和の話合いではなく、根回しなし、段取りなし、シナリオなしのワクワクするような本音の話合いをこの目でじっくり見てみたいと思ったのである。
3つ目が、議会主催の住民協議会が新たな議会像や議員像を生み出すきっかけ、ヒントになるのではないかとの問題意識である。この点については後ほど詳述したい。人口900人ほどの新庄村の議員定数は8人。村議選はいつも定数を上回る立候補者が現れ、現職が落選する激戦となっている。投票率は9割を超え、議員のなり手不足に困っている状況とはなっていない。とはいえ、女性議員はゼロで、女性の立候補もない。村議会議員は男性ばかりで、しかも60代以上。「村民一家族の村」を標ぼうする狭い地域とあって、誰が誰に投票したのか分かるという。ちなみに前回(2015年)の村議選のトップ当選者の得票数は98票で、最下位当選者の得票数は62票だった。激しい議員選が展開されながら住民と議会の間に深い溝があることは否めず、そうした実態が2017年に実施された住民アンケートで明らかになっていた。「議会に自分の要望や意見を伝えていますか?」との問いに対し、「伝えている」との回答はわずか5.71%だった。