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2019.01.28 議会改革

議選監査委員制度廃止なら、実地検査権を条例化すべき(その3)

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議選監査委員就任で改めて議選監査委員制度の必要性を痛感

小林華弥子(元大分県由布市議会議員) 大分県由布市議会議員をしていた際に、議選監査委員を去年まで2年間経験した小林です。一律に議選監査委員制度を廃止すべきか否かという論点だけで議論がすすんでしまってもいけないので、パネラーとして加わった。現職は、議員ではない。
 人口36,000人という小規模地方公共団体における議選監査についてお伝えしたい。実態として議会に会派はない。ポスト争いの結果として議選監査委員になったのではなく、私は議会内ではむしろ少数派に属していたが自ら手を挙げて監査委員になった。合併前の旧湯布院町時代の監査報告書が非常におもしろかった。民間の代表監査委員さんが、非常に有名な方だった。その方が毎年出す監査報告書が厚さ2センチぐらいという分厚いもので、それを読めば、町の状況が手に取るように理解できるという内容であった。私も初めて議員になった時には、行政の事情など知識が乏しかった。それで、先輩議員から、教科書として監査報告書を読めといわれ、監査報告書をテキストにして行政についての知識を深めていった。そういう経緯もあったので、一度は議選監査委員をやってみたかった。
 当初期が浅い時期には、希望はとおらなかったが、結果的に議選監査委員に就任できたのは、報酬が2万円なので安かったことと、その割に仕事量が多かったことから、皆、やりたがらないため、手を上げたらやらせてくれたという事情があったと思っている。また、実のところ、自分が議選監査委員に就任する前には議選監査委員制度などいらないという考えも持っていた。しかし2年間、議選監査委員をやってみて、やはりこれはあったほうがいいと思った。全国の市町村の監査方法は千差万別である。やり方や方法、何をどう見るかなど、市町村によって全然違う。私が、2年間監査委員を務めていた中でも、代表監査委員と議選監査委員の2人体制での監査であったが、人が変わると監査のやり方も変わった。
 前半1年間は、例月監査は2人の監査委員が事務局職員と一緒になって、全ての伝票をチェックしていた。しかし、後半の1年は、代表監査委員が交代したこともあり、事前に事務局がチェックをし、問題があった部分についてのみの監査委員がチェックする体制に変更となった。このように監査委員によって監査方法も変わるという経験をしたことからも、監査委員制度について全国一律に議論するのは難しいのではと考えている。

監査委員の人材供給源として議選監査委員は重要

小林 議選監査委員制度を仮に廃止した場合、特に小規模地方公共団体で、監査委員のなり手が不足するという可能性がある。小さな自治体の中では、自治体職員OBの数も限られているし、行政の監査に関心があって一定程度の行政の業務についての知識を有している、監査を実施するに足る能力と実績を有している、という点からすると、監査委員のなり手つまり供給源として地方議員が位置づけられているという実態がある。
 議選監査委員の業務をこなしながら、行政内部か外部かということを対立的にとらえられすぎているのではないかとずっと思ってきた。監査委員の仕事として、行政が市民から収めていただいた税金を適正に執行しているか、適正な行政運営をしているかについてチェックをしていくという最終目標に立てば、たとえそれが、行政内部の人間であろうが、議会の立場であろうが、いろんな視点や立場やいろんな専門性から監査できることが重要ではないか。
 議員は確かに財務のプロではない。しかし、行政政策を議決の形で決定してきた経験は大きい。一方で代表監査は、民間の方であったが、その方は予算審議を知らない。予算審議に加わっていなくて、予算が執行されている過程を見ても、数字として、適正に処理されているかということは見られても、そもそもこの予算はどういう目的の事業で、予算審議でどんなことが議論されて付けられた予算なのか、その背景をご存じない。議選の監査委員は、議会で予算審議にかかわっているので、その点については了解している。具体的には、年度末になって国の補助金などがつく補正予算や地方創生予算など、どうしても繰越すことになる。そうなると、とりあえずどのような費目に宛てるか大枠は決まっていても、現場では、政策目的を達成するために、費目流用を行なうことになる。民間からの代表監査委員は、とにかく流用はいかがなものかという意見であった。しかし、国からの補助金予算の性質や経緯が分かっている議選監査委員の私からすると、流用はよくないという原則論は理解できたとしても、一概によくないと言い切れなかった。単に予算執行の処理が正確かどうかを見るだけではなく、政策目的に適った使い方をしているかどうかを見極める事も必要だ。政策判断に関わった立場から監査をおこなうという重要性については、あらためて認識したところである。今述べたような事情からも、議選監査委員に存在意義があるかと思う。

議選監査委員は住民代表としての監査委員である

小林 もう一点は、議員は住民の代表であり、常に住民の声を背後に感じて監査を行っているということである。本来監査委員は常に住民代表として、住民の立場や視点を持って、監査に臨む必要がある。住民目線に立った監査はやはり、議選監査委員に一日の長があるのではないだろうか。そういう点から言っても、議選監査委員が果たすべき役割は非常に大きいということが私の体験から導き出された結論である。制度論として課題があることは認識している。制度がダメなら機能の議論はいらないと清水さんはおっしゃる。しかし、その議論は逆転していて、議員が監査に関わることが機能上重要であるという実態から、むしろ制度設計を行なうということが重要ではないのか。
 
江藤 いろんな論点があって、監査は政治的真空で動いているわけではないと新川先生もおっしゃっていて、なるほどと思った。専門性とはなんぞやと、もう一度確認しなくてはいけない。公認会計士だからいいという話ではない。また、議会も内部ではないかという議論もあり、中立性が保てないのではないか、という議論もある。
 

(下―その2)に続きます。2019年3月公開予定です(編集部)

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