2019.01.28 議会改革
議選監査委員制度廃止なら、実地検査権を条例化すべき(その3)
議会への実地検査権の付与が可能なのか?
桑畠 もし議会に実地検査権が与えられるなら議選監査委員制度の存廃は検討してもよいと思う。しかし、議会に実地検査権を付与するためには、それでなくても人員不足が叫ばれる議会事務局に人員を増員して検査権執行のための体制整備をしなくてはならないだろう。
意外にも、執行部側が監査に対して積極的に肯定している様子でないことが、議選監査委員に就任してみてよくわかった。議員の監査委員としての能力不足はよく指摘されるが、そもそも執行部側がそれほど熱心に監査を受ける気がないということを議員側も理解しており、忖度のうまい議員は、あえて熱心に監査を行わないことで、執行部側に恩を売ろうとしている気配も感じる。執行部側も、議選監査委員にとどまらず無難な人物が監査委員に就任することを望んでおり、活動的な議選監査委員を忌避する傾向がある。内部統制の充実の観点からも、執行部側も、多少耳の痛い指摘も受け入れる度量を持つことが重要ではないか。
議選監査委員制度不要論は地方議会不要論への一里塚?
桑畠 清水さんが指摘したような制度設計の欠陥も確かにある。さらに、第29次地方制度調査会の議事録を読み込んでわかったのだが、議員の能力への不信感が根強い印象である。確かに、財務諸表を読めないような議員を議選監査委員に選んでも成果は出ないだろう。
しかし、一番警戒しなくてはならないのが、議選監査委員制度不要論を突き詰めた先には地方議会不要論が展開されていく危険性を孕んでいることである。議選監査委員制度不要論は、大阪冬の陣。外堀が埋められている印象がある。実際に、町村議会のあり方研究会(総務省)において、地方議会の機能制限が公然と議論されるようになってきている。自治体議員の皆さんには、議選監査委員制度の選択制導入は、地方議会不要論への第一歩ではないかという警戒心を持っていただきたいと思っている。ただこれに共鳴する議員が少ないのが現実である。私も、議選監査委員制度を墨守すべきとは思ってはいない。自治体の規模によっては、やはり議選監査委員制度が過重な負担になってきている。制度論としてうまく機能していないからやめてしまおうということではなく、二元代表制を実質的に担保するものとして、議選監査委員制度に有用性があることは確かであると訴えたい。
江藤 話は、よくわかったが、桑畠議員だからこそ制度をうまく活用できているのではないか。本来的には、どの議員が議選監査委員に就任したとしても、一定の成果が保障される体制を構築するべきではないかと考える。議選監査委員に就任した議員の資質によって、監査のアウトプットが左右されるというのはよくない。その点をどう考えているのか。いずれにせよ、議選監査委員制度は一旦無くしてしまったら、まず制度の復活はできないだろう。
また、議長選挙が密室での談合から公開での選挙にようやく移行しつつあり、議長の資質も向上がみられる。このような選出制度の見直しが、議選監査委員の選出においても必要なのではないのか。
続いて、大分県由布市議会議員として議選監査委員経験のある小林さんからお願いします。