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2018.09.25 議会運営

第61回 議場外の活動に対する懲罰等について

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

議場外の活動に対する懲罰等について

QA議員は、議会での他の議員の質問や審議の状況について会議録が出される前に、FacebookやTwitterで発信している。あるとき、他の議員が不穏当な発言をし、その後、当該発言の取消しが本会議で認められたが、その発言についてA議員はFacebook等で発信した。この行動に対し、議会運営委員会で取消しが許可された不穏当発言を議会外に発信したら取消しの意味がなくなることから、発信をしたA議員に対し懲罰を科する旨の協議が行われているが、懲罰を科することは可能か。

A議員に対する懲罰は地方自治法(以下「法」という)134条1項に規定のとおり、地方自治法及び会議規則並びに委員会条例に違反した言動に対して科することができる。

【法134条】
①  普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。

 つまり、本問では、議会において取消しが認められた発言を議会外においてFacebook等で発信したことは、法134条1項における地方自治法等に違反した言動であるかが問題となる。
 まず懲罰に該当するかどうかは、4つの面で考える必要がある。すなわち、①人的限界、②場所的限界、③時間的限界、④事項的限界である。
 ①の人的限界とは、懲罰は議会の自律権に基づき科される秩序罰であるから、その対象は議員が議員として行った行為に限定されるということである。そのため、議員が例えば100条調査において証人として喚問された場合の証人としての言動は、懲罰の対象とならない。
 本問において考察すると、Facebookでの情報発信は、議員としてその行為を行ったものといえるため該当する。
 ②の場所的限界とは、懲罰の対象となる場所は本会議及び委員会、議員派遣、委員派遣における場、つまり議会における言動に限定されるということである。それゆえ、議会外での場における言動については懲罰の対象とならない。なお、福岡地裁判決昭和24年12月28日や最高裁判決昭和28年11月20日も同様の内容の判決を出している。
 本問において考察すると、Facebookでの情報発信は本会議や委員会等の議会としての活動として行ったものではなく、議会外において行った活動であり、該当しない。

【福岡地裁判決昭和24.12.28】
 議会の議員に対する懲罰は、場所的には、議場または議会における議員の言動を対象とし、事項的には、合議体である議会の運営にあたり、議会の品位をけがし、その権威を失墜するような言動ないし議会の円滑な運営を阻害する言動に限定される。すなわち、この両方面からの限界があり、多くの場合は、議場内または議会において生じた言動が、懲罰の対象となるのであるが、議場又は議会外において生じた行為についても、場所的には議場または議会の延長であり、事項的には、議会の運営に関するものと認められるべき事項(たとえば、秘密会における議場内容を外部にもらすなど)には、懲罰を科することができる。
 

【最高裁判決要旨昭和28.11.20】
 議会の運営と全く関係のない議員の議場外における個人的行為は、懲罰事由とすることができない。

 ③の時間的限界とは、懲罰の対象となる時間は原則として議会開会中における言動に限られ、例外として閉会中においては議員派遣、委員派遣、閉会中の継続審査・調査や秘密会での秘密漏えいが該当するということである。これについては福岡地裁昭和29年10月25日判決があり、閉会中の言動は懲罰の対象とすることはできないとの判決が示されている。
 本問において考察すると、Facebookにおける発信は開会中におけるものであるが、開会中における本会議中や委員会中における言動には該当しない。

【福岡地裁判決要旨昭和29.10.25】
 地方議会閉会中に議員の行為は、地方自治法109条第6項所定の常任委員会におけるものにかぎり懲罰の対象とすることができ、議会閉会中慣行として開かれる常任委員の協議会における議員の言動などは、これを懲罰の対象とすることはできないものと解すべきである。

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