地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2018.09.25 議会改革

第22回 評価による議会からの政策サイクルのバージョンアップ(下)

LINEで送る

③ タイムスパン
 通年(年度、1年)、通任期、定例会、それぞれのタイムスパンを意識した目標設定と評価が必要である。議会基本条例に即した議会運営、政策のうち、条例はタイムスパンを明確化することが容易である。それ以外の政策は、タイムスパンを意識する必要がある。所管事務調査、予算・決算(特別・常任)委員会、総合計画に関する委員会等、これらと目標設定、それに基づくタイムスパンの設定が必要である。
 大津市議会の「議会ミッションロードマップ(議会版実行計画)」では、議会運営と条例に特化して目標設定とタイムスパンを明確化している。議会運営と住民福祉の向上という2つの領域の目標設定を含んでおり、後者は、条例制定に限定されている。目標設定ということでは分かりやすい。ただし、議会がかかわる領域は条例だけではない。より広い目標設定とタイムスパンを意識した例としては、可児市議会の「4つのサイクルアニュアルプラン──民意を反映する政策タイムライン」がある。目標設定とともに、タイムスパンを意識する際に有用な発想である(図3参照)。

図3 可児市議会「4つのサイクルアニュアルプラン――民意を反映する政策タイムライン」図3 可児市議会「4つのサイクルアニュアルプラン――民意を反映する政策タイムライン」

④ 評価の主体
 議会からの政策サイクルの評価に当たっては、議会運営と住民福祉の向上の2つの領域での評価が必要である。議会運営の評価は容易であるし、実践も行われている。自己評価にとどまらず、第三者評価も模索されている。
 旭川市議会は、2010年に制定された議会基本条例を自己評価するとともに、2012年度から外部検証委員会である第三者委員会による外部評価を実施している(2年ごとに評価・検証、詳細は「議会による自己評価に加え、外部有識者による検証を実施──北海道旭川市議会」『ガバナンス』2015年5月号、参照)。
 このように、議会基本条例条文をもとにして自己評価を行うとともに、それを踏まえて外部評価を行う議会も増えてきている。諫早市議会「平成27年度議会基本条例の自己評価及び議会運営のあり方 検証結果報告」では、議会運営の評価をしつつ、住民福祉の向上につなげる指摘をしている(2)。「今後の議会運営のあり方に対するまとめの提言」を踏まえて、「議会の活性化と市民福祉の増進及び市勢の発展」を期待する旨を述べている。さらに、住民自治についても「『議会の活性化と市民福祉の増進及び市勢の発展』には、議会内の改革ばかりでなく、市民の政治意識のレベルの向上が不可欠な要素となることから、これからは共に成長する視点からの議会改革を考えることも一考の余地がある」との指摘がある。これは、本連載の趣旨と共通する。
 今日、議会において行われている評価は、主に自己評価であり、第三者評価があるとしてもそれは議会運営に限られている。本稿の問題意識からすれば、住民福祉の向上の領域の評価が重要な論点となる。
 政策の位相では、まずもって、目標設定に基づいて生産物(政策)がつくり出されたかが問われる。この評価は容易である。政策の有無とかかわるからである。自己評価とともに、第三者評価、そして選挙による評価が可能だろう。それに対して、その政策が住民福祉の向上につながったかを問うことは困難である。「説明責任」としての自己評価は必要である。とはいえ、第三者評価でも困難である。参考として第三者評価は必要であるが、結局、選挙となる。政策とは、政治的価値が凝縮しているものだからである。
 さらに、政策サイクル(システム)の評価に当たっては、自己評価、第三者評価、そして選挙が想定できる。しかし、この評価は、全国的視点での評価が不可欠である。その意味で、個々の研究者等による評価は可能であるとしても限界がある。全国的な第三者機関による評価が不可欠である。
 大津市議会は、前述の「議会ミッションロードマップ(議会版実行計画)」の進行管理について、年2回自己評価・検証を行うとともに、外部評価を模索している。議会運営領域とともに住民福祉の向上にかかわるミッションも組み込んでいるために、2つの領域を含んだ評価となる。ただし、後者の領域は条例に原則限定されている。外部評価については、毎年行う自己評価とともに、「最終年度においては、4年間の成果を外部からの視点も取り入れて客観的・総合的に評価・検証し、次期議員任期における議会活動に活用します」としている。
 なお、一般に検証の項目には入っていない住民アンケート、議会改革度調査ランキング(早稲田大学マニフェスト研究所等)、及び議会(だより)モニター、議会サポーター・アドバイザーによる評価は、導入可能な外部評価である(3)

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る