2018.08.27 なり手不足
議員のなり手不足の要因分析 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その6)──
勤労者の参画の困難
勤労者が議員活動をする場合、各企業などの就業規則によって兼業が困難な場合が多い。日本の労働基準法制では、「公民権行使の保障」として、労働者が議員活動のために必要な時間を請求した場合には使用者はこれを拒むことはできないことになっているはずである。しかし、それが画餅になっているのである。
企業側に兼業議員への理解を求めるのは、極めて難しい。企業はできるだけ従業員に、企業側の一方的な都合によって、仕事をさせたいからである。長時間労働が前提であるので、議員活動に割けるエネルギーがあるぐらいならば、企業に貢献することを求める。労働者が実際にとれる有給休暇は短くする。また、兼業議員が休業しても、補償する気はない──そうした経営思想の表れが、職務専念義務・兼業規制なのである。平日残業が常態化しているので、仮に議会運営が平日夜間開催になったとしても、議会に出席することは容易ではない。休日出勤もめずらしくないので、議会運営が土日休日開催になったとしても、議会にも出席し難い。長時間労働が現状のままであれば、仮に土日休日・夜間に議員活動をしたとしても、兼業(ブラック)議員は過重負担で疲弊してしまうだろう。
要するに、企業側の働かせ方がなり手不足の要因であるならば、日本の経営者という存在がある限り、実は対策がないということでもある。
おわりに
『報告書』で分析されたなり手不足の要因は、説得的なものもあれば説得的でないものもある。議決事件の多さや定数の少なさは、あまり説得的ではない。議決事件が減ったからといっても、定数が多くなったからといっても、議員の負担は減るとは思えないからである。要因分析が説得的でないときには、対策も効果的ではあり得ない。 分析された要因の中には、それなりに説得的なものもある。しかし、要因として分析されたものが、対策によって是正可能であるということは保証しない。むしろ、対策が存在しないことを暗示するような要因が多数であるともいえる。議員報酬も議会運営も勤労者兼業困難も、現状の環境条件を前提にすると、現状のようななり手不足になるのはそれなりに論理必然であるからである。
こうしてみると、解決策はほとんどないという結論になるだろう。せいぜい、大した効果は期待できないが、兼職禁止と請負禁止を緩和・撤廃するしかなく、そのために失われる価値を確保するための代替手法を考案できるかどうかが、鍵となるように思われる。
【つづく】