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2018.08.27 なり手不足

議員のなり手不足の要因分析 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その6)──

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議員報酬の低さ

 議員報酬は市町村の規模によって金額が大きく異なる。小規模市町村では、月額20万円を下回ることが多い。会期日数が限られているから、兼業的に他に職を持って、収入を得ることが想定されているともいえよう。とはいいながらも、「他の職業と兼業するには議員活動に係る時間的拘束が大きい」という。しかし同時に、「議員報酬だけでは生計を立てていけないという状況」という。つまり、兼業する時間はないが、兼業しなければ生活できない、という矛盾した状況にあり、それゆえになり手不足になるというわけである。これが第3の要因である。
 この場合には、対策は簡単に見える。議員報酬を引き上げるか、議員活動に係る時間を短くするか、どちらかであろう。しかし、住民世論の厳しさを想定すれば、議員報酬を引き上げる見込みは乏しい。同時に、住民世論の厳しさを想定すれば、議員活動の時間を短くして、議員の仕事を手抜きすることを許容する見込みも乏しい。つまり、現状のようになっているのは、住民世論を前提にした均衡解なのであって、それを変更することは極めて難しい。住民世論に反してまで、制度によって議員報酬の引上げ、あるいは、議員活動の時間短縮を強要するには、相当の集権的な力業が必要であろう。

兼職禁止・請負禁止

 職務を完全に果たすための妨げを禁止すること、議会運営の公正を保障すること、事務執行の適正を確保することなど、兼職禁止・請負禁止にはそれなりに理由がある。しかし、小規模市町村においては、(現役世代の)人口が少ないことから、公務部門の人材(=行政職員)や市町村との取引関係がある事業者が議員になり得ないことによって、なり手の母集団が限られるという実態的影響は大きい、と『報告書』は指摘する。
 この点が、なり手不足の第4の要因であるならば、対策は簡単であり、兼職禁止・請負禁止の緩和又は撤廃ということになろう。もっとも、そのときには、上記のような兼職禁止・請負禁止で目指された価値・目的を確保することが、別の方策によって代替できるかが問われることになるだろう。さもなければ、なり手確保という価値と上記の諸理由との、トレードオフになってしまう。

議会運営の制約

 小規模市町村の議会運営は、平日昼間が中心で、かつ定例会・臨時会方式が普通である。このような議会運営の形態をとる場合、勤労者であるならば、当初予算や決算審議など、議会活動のために仕事を休まなければならない日が1週間以上続くので、兼業議員に対する企業・使用者の理解は得られにくい状況にある。
 この点がなり手不足の第5の要因であるならば、解決方策は簡単である。議会は土日休日・夜間開催にすればよいだけのことである。そして、そのようなことは、国で決めるまでもなく、各議会が必要だと思えば、自主的に決定すればよいだけのことである。とはいえ、現実には簡単ではない。なぜならば、議員は勤労者兼業議員ばかりではないので、平日昼間の方がありがたい議員もいる。もっといえば、平日昼間を前提に議員になっている現在のメンバーからすれば、運営方式を変更することに合意することは容易ではない。ということは、これがなり手不足の要因であるならば、実は対策がないということでもある。
 もちろん、自治体側ではなく企業側が変更すればよいともいえる。つまり、連続平日昼間開催でも、企業がそのような休業を認めればよいだけである。この点については、次の論点と重複するので後述する。

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