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2018.07.25 議会運営

第60回 被選挙権に係る資格決定について

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 そして、住所の認定に当たっては、行政実例(以下「行実」という)昭和26.2.7のとおり、住所は生活の本拠であるから、本人の意思及び客観的事実を総合的に判断して認定すべきものであり、各人の生活状況に即応して具体的に判断すべきものであるといえる。ちなみに、単に配給を受けていることの事実のみでは、住所ありと認定することはできないことに注意する必要があるといえる。

○市から町村が分離した場合の議員の身分(行実昭和26.2.7)
 問 高岡市から新湊町及び牧野村が分離した場合において議員の身分につき次のように解してよいか。
 1 引き続き新設置町村に住所を有する議員は、第127条第1項の規定により被選挙権を有しない者であることの決定があることによってのみその職を失う。
 2 新町村設置後に新町村の区域から高岡市の区域内に住所を定めた議員は、高岡市の議員の被選挙権を有しない者であるから、第127条第1項の規定によりその旨の決定をなすべきである。
 3 1及び2の場合の決定議案の提出権は議員に専属する。
 4 新町村設置前に新たな高岡市の区域に属する区域内に住所を定め引き続き居住している議員は、高岡市の議員の職を失わないので、被選挙権の有無のための決定をすべきでない。
 5 被選挙権の有無を決定するための方法として、あらかじめ2及び4の場合における住所はいかなる方法によって認定するのが妥当と考えるか。
 6 被選挙権の有無の決定が遅延していることによって、議会は当然には法律的な責任を有しない。
 答1 お見込のとおり。
 2 お見込のとおり。
 3 お見込のとおり。
 4 お見込のとおり。
 5 住所は生活の本拠であるから、本人の意思及び客観的事実を総合的に判断して認定すべきである。なお、住所の認定は、各人の生活状況に即応して、具体的に判断すべきであり、単に配給を受けている事の事実のみでは、住所ありと認定することはできないから念のため。
 6 法律上の責任はないが、議員の資格に疑義があるときは、可及的すみやかにこれを決定すべきである。

 また、行実昭和27.2.11のとおり、議員本人又は家族の病気療養のために市町村に滞在する事実のみでは、直ちに住所を移転したことにならないことにも留意を要する。

○住所の決定(行実昭和27.2.11)
 問 数年以来自宅に現住し、その町村において業務を営み、住民税を納め、主食配給等を受けている等の事実のある議員が、家庭の事情により他町村に別居している妻子のもとに病気療養のために滞在する場合、3か月の別住制限をこえない限り選挙権を失うことはないと考えられるがどうか。
 答 選挙権の要件たる住所は、居住の客観的事実及び生活の本拠とする旨の本人の主観的意思により決定すべきものであつて、病気療養のため他市町村に滞在する事実のみではただちに住所を移転したことにはならないから、滞在期間のいかんにより選挙権を失うものでないと解する。

  これらを勘案し、議員の資格に関し疑義を持つ議員は、議長に対し標準市議会会議規則148条に基づき資格決定要求書を提出することとなる。

【標準市議会会議規則148条】
法第127条第1項の規定による議員の被選挙権の有無又は法第92条の2の規定に該当するかどうかについて議会の決定を求めようとする議員は、要求の理由を記載した要求書を、証拠書類とともに、議長に提出しなければならない。

 資格決定の要求は、議員であれば誰でも可能であり、資格に疑義を持たれている議員も疑義を晴らすため自ら要求が可能である。なお、資格決定要求をすることができるのは議員のみで、長は提案権を有しない。
 法127条による資格決定の効力は、議会において資格決定の対象となっている議員に対し、被選挙権を有しない又は法92条の2の兼業禁止に該当すると判断した場合には、行実昭和25.12.20及び行実昭和37.5.1のとおり、議会における当該資格決定の議決のときから議員の身分が失われる。それゆえ、資格決定に係る文書の交付を対象議員が受理したときから効力が発生し、資格決定に係る事象が発生したときにまで遡及して効力が発生することはない。
 資格決定の要求は、議員の任期中における議会の開会中であれば、いつでも可能である。
 資格決定は、法127条1項のとおり出席議員の3分の2以上の賛成による特別多数議決により決定される。
 議会において被選挙権なしと決定されたことに対して不服があった場合は、法127条3項により申立て又は出訴することが可能であるが、その場合においても議員としての身分は失われたままである。

【法127条】
③ 第118条第5項及び第6項の規定は、第1項の場合について準用する。

【法118条】
⑤ 第1項の規定による決定に不服がある者は、決定があつた日から21日以内に、都道府県にあつては総務大臣、市町村にあつては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあつた日から21日以内に裁判所に出訴することができる。

 議会における資格決定は、議員の身分の得喪に係る重要な事件であるので、十分な審査・調査が必要であることに留意を要する。  

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