2018.07.25 政策研究
議員のなり手不足 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その5)──
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
総務省に設置された「町村議会のあり方に関する研究会」(以下「研究会」という)の報告書(以下『報告書』という)の実体的な評釈を連載しているところである。前回は「Ⅰ 社会状況の変化と小規模市町村における議員のなり手不足」の前半部分を検討してきた。そこで、今回からは、その後半部分の「3 議員のなり手不足の要因」を検討することとしたい。
地方議会制度の沿革
問題が設定されれば、対策を検討するためには、その問題を生み出した要因を探る必要がある。それが「3 議員のなり手不足の要因」の箇所である。要因をどのように探るかは難しいことではあるが、『報告書』は、歴史(時系列比較)と外国(同時的比較)という手法を採用しているようである。
もっとも「(1)地方議会制度の沿革」では、歴史を探ることによって、過去には存在していなかった議員のなり手不足問題が、現在に現れている要因を探ろうとする。大きくいえば、第1に議会権能の拡充、第2に議員身分の規制強化である。
議会権能の拡充
第1の議会権能の拡充は、以下のとおりである。
1つには、議決権など議会権限が拡充されてきた。当初は、条例制定改廃、予算議決、決算認定、地方税の賦課徴収などに限られていたという。その後、財産取得や契約締結、監視のための検査権や監査請求権などにも拡張されてきた。また、議案提出権、修正動議の発議権の要件も緩和されてきた。さらに、議会事務局などの体制整備や、公聴会・参考人制度、議員派遣制度、学識経験者による専門的調査など、議会の権限・活動の充実が進んできた。
2つには、議会の権限・活動の充実に並行して、議員に対する給付も拡充されてきた。具体的には、議員活動に係る報酬、期末手当の支給、政務調査費又は政務活動費などである。
3つには、議会の組織・運営の自律性・裁量性の拡大である。議員定数は、当初の法定定数制度から、法定上限制度を経て、現在は条例で自由に決定できる。また、議決事件は、条例によって追加できるようになった。議会運営についても、定例会の招集回数が自由化され、さらに通年会期制も可能になった。常任委員会数の制限も、常任委員会への所属制限も撤廃された。
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