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2018.07.25 なり手不足

議員のなり手不足 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その5)──

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諸外国の議会制度

 『報告書』によれば、イギリス・ドイツ・フランスなどの基礎的自治体議会の議員は、名誉職的な性格を持ち、議員以外の職務により収入を確保している。それゆえ、議員報酬は通常少額の手当や費用弁償のみとなる。また、他の職との兼業がしやすいよう、夕方・夜間開催が通例とされている。また、議員活動のために給料が失われた場合には、それを補塡する給料補塡手当があるという。
 議員と公務員との兼職禁止は、当該自治体内の兼職、あるいは、管理職など特定の職位の公務員との兼職が禁止される。また、公務員が議員の職に就いたときには公務員を休職し、議員としての職務が終了した場合は復職するという。異なる種類の議員間の兼職についても、限定はあるものの認めるようである。さらに、勤労者が議員活動をしやすいように、使用者は労働者に対して議員活動をできる時間を提供しなければならないという。
 『報告書』は、諸外国との比較制度的な観点から、兼業は緩和されるのが国際標準であるような方向を打ち出している。ただし、一般論として展開するのではなく、「これらの制度は、兼業議員を前提とした、多様な人材の参画に親和的な議会制度である」として、『報告書』が打ち出す「多数参画型」という処方箋にのみつなげるようである。

兼業議員の可能性

 もっとも、『報告書』で課題とされる小規模市町村議会の場合には、以前も現在も、兼業的性格が強い。これに対して、都道府県議会や大都市議会の場合には、専業的性格が強いといわれる。とするならば、もともと兼業的性格の強い小規模町村議会の課題解決のために、兼業規制の緩和を提唱しても、効果は乏しいのかもしれない。そもそも、現状でもすでに、町村議員は、ほかに定職又は収入源があるのが普通のイメージだからである。結局、残された問題は、行政職員との兼業が禁止され、会社員との兼業が事実上困難である、の2点に絞られよう。
 しかし、それは議員個人の人生設計の問題である。それは、特定の議会全体として選択可能な問題ではない。実態として、町村議員の多くが兼業的であり、都道府県議員の多くが専業的であるとしても、それは傾向性にすぎない。個々の議員がどのような人生や家計状況であるのかは、一律ではない。ただ、現在の町村議員は、議員職だけでは生活できない程度の議員報酬しかないこと、しかし、被用者との兼業は困難であることから、年金生活者と自営業者・会社経営者に偏り、議員のなり手の母集団を狭めているのである。

おわりに

 以上、『報告書』の要因分析を要約すれば、議会権能が充実し、身分規制が強化されたゆえに、議員のなり手不足が深刻化したという立論になる。このような要因を前提にすれば、議会権能を削減し、身分規制を緩和する、という諸方策が出てくるだろう。もっとも、上記のとおり、必ずしもこの2つの要因が議員のなり手不足をもたらしたわけでもなさそうである。そうなると、『報告書』の処方箋はそれほど効果的ではないことになろう。

【つづく】

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