2018.06.25 議会改革
小規模市町村の課題 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その4)──
二分法の限界と連続的・個別的対処の必要
そもそも、線引きが難しいということは、人口規模段階で課題の大小があるとしても、それは二分法で線引きできるものではないことを示唆する。つまり、人口段階に応じて、あるいは、人口数に相関して、多段階的に、連続的・遷移的にグラデーションを持っているのかもしれない。すると、二分法によって、課題のある小規模市町村と、課題のない中大規模市とを区別し、前者にのみ対策を施すという処方箋は、合理的ではないことになる。課題は、多かれ少なかれ全ての自治体議会に見られるものであり、それは、それぞれの事情に合わせて、処方箋を考えていくしかないということになるようにも思われる。しかし、『報告書』は、小規模市町村にのみ問題を集中させようとするのである。
中長期的趨勢(すうせい)への視界
『報告書』のⅠ「1 市町村の変容」では、市町村合併の進展により市町村数が激減し、平均人口規模は拡大したことを確認する。2017年1月1日時点では平均人口は約6万9,000人である。しかし、人口1万人未満・1,000人未満の町村は平成の大合併後にも存在し、さらに、近年の人口減少の結果、こうした町村は増加していると指摘している。
全体の趨勢としては、市町村合併で人口規模を拡大することで、「小規模自治体」という存在は消滅させられてきた。あえていえば、「平成の大合併」によって「小規模自治体問題」は傾向としては解消されたともいえる。しかし、「社会も大きく変化した中で、従前のあり方を維持し続けた小規模市町村も存在」(1頁)というように、いわば因習にとらわれた頑迷固陋(ころう)な「小規模自治体」が「平成の大合併」という国策にもかかわらず残存し続けたということで、一部小規模市町村に対策が求められているという情勢認識かもしれない。
さらにいえば、人口減少の趨勢からすれば、「平成の大合併」によって「小規模自治体」が一時的に減少したとしても、将来的には「小規模自治体」が増加するのは不可避と見て、予防的に検討をしているのかもしれない。
実際、総務省では2040年という将来を見据えて、別途、同時並行的に、「自治体戦略2040構想研究会」を開催している。2017年10月2日の第1回研究会に事務局(自治行政局)が提出した「資料4」でも、人口1万人未満の市町村が2040年にどの程度人口減少が生じるかの推計を示している(1)。つまり、当面の問題というよりは、『報告書』はもっと中長期的な地平を見据えているのかもしれない。この点は、議長会など当事者の視界よりは、総務省は遠くをも展望しているともいよう。
もっとも、自治省・総務省のこれまでの「お家芸」からすれば、将来的に人口減少がさらに進めば、さらに市町村合併をすればよい、ということにもなるだろう。当面、「平成の大合併」の推進国策は打ち止めされたので、短期的には合併という処方箋はとれない。しかし、中長期的課題を見据えるならば、「次元号の大合併」が不可避である、ということになるだけである。それが、膨大な面積を持つ、およそこれまでの市町村という概念には当てはまらないものになるかもしれない。しかし、「平成の大合併」によって、都県レベルの面積を持つ市町村が出現しているのも事実である。そもそも、離島の場合、陸地面積は狭いとしても、実際の空間的広がりは膨大であることも見られる。