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2018.06.11 政策研究

第21回 財政に関する各種計画

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1 財政計画

(1)財政計画とは
 財政計画とは、長期的展望に立ち、自治体で策定する財政運営の計画(財政の収支見込み)を指す。財源の効率的な運用を図るなど、適切な財政運営をするために作成され、中期財政見通しや中期財政計画と呼ぶ場合もある。計画期間も5年、10年など様々で、計画策定も義務ではない。
 自治体が計画的に行政運営を行っていくためには、財政の計画も当然必要となる。基本計画などで、施設整備や住民サービスなどの各種事業を予定すれば、その裏づけとなる財源も当然必要となるため、長期的な財政計画が作成される。

(2)財政計画の視点
 財政計画には、以下のような視点がある。
 第1に、収支改善の視点である。例えば、赤字決算が続くようでは、借金が雪だるま式に増えてしまう。そのため、黒字化するためにシーリング(概算要求基準)を行うなどの対応が必要になる。
 第2に、財政指標の視点である。経常収支比率、財政力指数、公債費負担比率など、自治体の財政指標について、どのような数値目標を設定するかという視点のこと。例えば、経常収支比率が適正範囲といわれる70~80%を超えているのであれば、今後どのように改善していくかということがポイントになる。
 第3に、後年度負担の視点である。これは地方債残高の将来見込みを指す。例えば、今後、施設建設があり起債の予定があれば、当然、地方債残高が増えることになる。一方で、以前に借り入れた分を毎年返済したり、満期一括償還の地方債の期限が到来したりすれば、当該年度に返済することになる。このように、地方債残高がどのように推移するかということも視点となる。
 第4に、基金残高の視点である。借金である地方債残高も大事なポイントだが、預金である基金残高も重要。これらを併せて考えると、結局は借金が多いのか、預金が多いのかが分かる。経済状況などによって税収は左右されるので、基金・地方債の残高は重要となる。

(3)財政計画の作成方法
 実際の財政計画の作成方法は、自治体により異なり、統一した方法はない。一例として、以下のような方法がある。

1 歳入
①地方税
 コーホート法により人口を推計し、地方税を算出。固定資産税は評価替えを勘案。
②地方交付税
 基準財政需要額と基準財政収入額を見込み、そこから地方交付税を算出。
③国・都道府県支出金
 今後の扶助費の動向や施設整備などを勘案して算出。
④地方債
 今後の施設整備を勘案して算出。

2 歳出
①義務的経費
 人件費は職員数の見込みにより算出。
 扶助費は現行制度をベースにして新たな福祉施設の運営費などにより推計。
 公債費は、既発行分及び発行見込額の元利償還金により推計。
②投資的経費
 施設整備や、既存施設の更新等を勘案し算出。

2 地方債計画

(1)地方債計画とは
 地方債計画とは、毎年度、総務省が地方債同意・許可の運用上の基準とするため財務省と協議して策定する地方債の年度計画のこと。地方財政法5条の3第10項に規定されている。簡単にいえば、毎年の年末頃に発表される、来年度の地方債の発行予定額のこと。
 地方債計画の役割としては、①地方債の同意(許可)の基準(この計画に基づき、地方債が同意される)、②地方債の原資の保障(地方債の原資を事業別に予定し、資金供給先別の内訳を示す)、③自治体の財政運営の指針(地方債計画は地方財政計画と同様に公表され、事業別の地方債の見通しを示す)がある。

(2)地方債計画の内容
 地方債計画では、資金別、事業別、会計別の状況が示されている。
 資金別とは、地方債を借入先(貸し手)で分類したもので、公的資金(財政融資資金、地方公共団体金融機構資金)と民間等資金(市場公募資金、銀行等引受資金)に分類したものを指す。
 事業別とは、一般会計債と公営企業債に分類するもの。一般会計債には、公共事業、公営住宅建設事業、災害復旧事業、教育・福祉施設等整備事業などがあり、公営企業債は、水道事業、交通事業、港湾整備事業、病院事業・介護サービス事業などがある。
 会計別とは、普通会計分と公営企業会計分に分類したもの。普通会計とは、一般会計、及び企業会計以外の特別会計を合算して、会計間の資金の移動を控除したもの。

(3)財政投融資計画と地方財政計画との関係
 この地方債計画は、財政投融資計画と地方財政計画と密接な関連がある。地方債計画も含め、いずれの計画も国の予算に並行して策定されるものである。
 国が国債(財投債)を発行して資金を調達し、その資金を自治体などに供給することにより、自治体などは事業の実施が可能となる。こうした事業の実施を可能とするための投融資活動(資金の融資、出資)が財政投融資である。
 財政投融資計画は、財政融資、産業投資、政府保証による資金供給の予定額について、個別の財投機関(自治体など財政投融資を活用している機関)ごとに一覧表にしたもので、毎年度の予算編成に合わせて策定され、法律に基づき国会に提出される。
 また、地方財政計画は、地方交付税法7条の規定に基づき作成される地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類で、国会に提出するとともに、一般に公表されるものである。
 自治体は財政投融資を活用している財投機関の1つである。このため、財政投融資計画における自治体への貸付分が、地方債計画の資金別の財政融資資金に対応することになる。
 また、地方財政計画は歳入歳出総額の見込みであるため、地方債は歳入の1つとして計上される。これに対応するものが、地方債計画の普通会計分となる。
 以上のように、地方債計画、財政投融資計画、地方財政計画は密接に関連している。

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