2018.04.10 政策研究
第19回 債券と償還差益・償還差損
1 債券
(1)債券とは
債券とは、国、地方自治体、企業などが、投資家から資金を調達することを目的として発行する証券(借金証書)のことを指す。あらかじめ支払う金利や満期日が定められており、債券に投資した投資家は定期的に金利を受け取ることができ、満期になると元本が償還される。
資金調達をするために発行する点では、株式と目的は同じだが、あらかじめ利率や満期日などが決められて発行される点が株式とは異なる。
(2)債券市場とは
債券市場とは、債券の取引が行われる市場のこと。ただし、売り手(債券の発行機関や投資家)と買い手(投資家)が1か所に集まって売買を行うのではなく、電話やインターネットなどを通じて売買の価格交渉が行われる。
なお、債券市場には発行市場(プライマリー市場)と流通市場(セカンダリー市場)がある。
発行市場とは、新しく発行された債券を、債券を発行した機関が投資家に売却して資金調達をする市場のことをいう。流通市場とは、すでに発行された債券を投資家同士で売買する市場のことをいう。この流通市場では様々な債券(国債、地方債、社債など)が売買されており、その売買価格は需給等により変動する。
以上のことから、ある自治体が債券(地方債)を発行したからといって、最初の購入者が期限まで持ち続けているとは限らず、他者との間で売買されることもある。また、債券は発行したときの金額がそのまま維持されるのではなく、発行後は額面金額とは異なった額で売買される。
2 償還差益・償還差損
(1)償還差益・償還差損とは
国債や地方債などの債券は、常に額面どおりの価格ではなく、そのときの売買価格によって変動するため、償還差益や償還差損が生じるという事態が起きる。
これは、自治体の資金運用者の立場になると分かりやすい。例えば、現在、財政調整基金にまとまったお金があり、一般的な普通預金(流動性預金)に預けていたとする。しかし、このまとまったお金は、来年12月までは特に使う予定はないため、このまま金利の安い普通預金に預けていたのでは、たいした利息は期待できない。
このため、資金運用者は、銀行などの定期性預金に預けるか、国債や他の自治体が発行している地方債などの債券を買って、資金運用することを検討する。もちろん、ほかにも金融商品はあるが、自治体の資金運用なので、元本割れするような金融商品は対象外となる。その検討の結果、債券を購入することとしたとしよう。
債券は、発行した際の額面金額と、その後の流通段階での売買価格が必ずしも一致するとは限らない。額面100万円の債券を98万円で購入したり、101万円で購入したりすることがある。
額面よりも高い金額で購入することは、何かおかしいように感じるかもしれない。しかし、その債券の金利が高く、購入金額が額面金額よりも多少高かったとしても、満期までの利息を得られ、満期時には額面の金額を受け取ることができれば、現在新規に発行している債券を購入するよりも、結局は得だということも当然ある。
反対に額面よりも低い売買価格の債券は、現在、新規に発行している債券よりも金利が低いことなどが、その理由として考えられる。額面金額より安く買えることから、満期になれば利息だけでなく、額面金額と購入金額の差額も利益となる。
このように、発行金額と購入金額に差があることから、償還差益・償還差損が生じる。金利のことも勘案し、「結局、利回りはどうだったのか」を押さえておくことが大事になる。
(2)償還差益のケース
償還差益とは、次のようなケースである。
例えば、額面金額100万円(利率2%・期間2年)の債券を、100万円で購入した場合には、利回りは2%となり利率と同様になる。しかし、この債券を99万円で購入した場合には利回りは2.53%となり、利率を上回る。
これは、年間の利息2万円のほかに、額面金額と購入金額の差1万円の収益(償還差益)を満期時に得ることができ、これを1年に換算すると5,000円となり、(2万円+5,000円)/購入金額99万円=2.53%となるためである。
(3)償還差損のケース
次に、償還差損とは、以下のようなケースである。
額面金額100万円(利率2%・期間2年)の債券を、101万円で購入した場合には、利回りは1.49%となり利率を下回ることになる。
これは、年間の利息2万円があるものの、購入金額101万円のため額面金額100万円との差1万円の損失(償還差損)が満期時に発生するためである。これを1年に換算すると5,000円となり、(2万円-5,000円)/購入金額101万円=1.49%となる。