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2018.03.26 政策研究

配布資料が欠けている研究会 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その1)─

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構成員の二重性

 いわゆる研究会は、学識者のみで構成することが普通である。所管局課の官僚のブレーンストーミング的な役割を期待されることが多いからである。これが、具体的な制度設計や、関係団体の意向確認や利害調整などが重要となる、いわゆる審議会となると、学識者だけでは不充分で、関係団体、報道人、実務家、政治家などが加えられることもある。上記研究会は、その名称のとおり、いわゆる研究会であって、前者タイプの構成であり、学者(大学教授)のみ8人の純然としたものである。
 もっとも、研究会・審議会ともに共通したことであるが、構成員だけが発言し、構成員同士だけで議論するのではない。むしろ、実態は異なる。構成員は、事務局である所管局課の官僚と質疑応答をするのが普通である。事務局の支援を受けた座長の司会進行の下、構成員が事務局官僚と会話を行うのが基本である。つまり、事務局官僚が、発話ないし対話のハブ(中心)の役割となる。当然、発言時間も事務局官僚が多くなる。これに加えて会議冒頭で事務局が、事務局提出の資料を延々と説明すれば、さらに事務局官僚の発言時間は多くなる。
 つまり、何がいいたいかというと、こうした研究会の実質の構成員は、いわゆる正式構成員だけではないということである。むしろ、事務局官僚こそが、真の構成員である。研究会の開催要綱によれば、「研究会の庶務は総務省自治行政局行政課において処理する」とある。研究会庶務(事務局)とは、つまり所管局課である。要するに、自治行政局関係者も実質の構成員である。とはいえ、この真の構成員は、開催要綱では記載されない。これは、議事緑を見るしかない。
 例えば、「第1回議事概要」を見れば、「幹事」として、自治行政局長、大臣官房審議官、住民制度課長、市町村課長、行政経営支援室長が出席している。また、「事務局」として、行政課長、行政企画官、行政課課長補佐が出席している。つまり、これらのメンバーが、属人的か宛職的かはともかく、真の構成員なのである。開催要綱には「幹事」は明示されていないが、庶務(行政課)関係者であることには違いないから、特段の違和感はないかもしれない。もっとも、それならば、議事概要にも「事務局」の一員として記載すればよいようにも思われる。「幹事」とは、事務局以上で、公開の構成員未満の、真の構成員というところであろう。

議事の非公開性

 開催要綱によれば、「会議は非公開とする」そうである。ウェブでの同時動画配信すらあるような昨今の「情報公開時代」において、珍しいかもしれない。もっとも、所管局課官僚の自由なブレーンストーミングの会議なのであるから、非公開というのもあり得るだろう。局課内での官僚同士の議論をいちいち会議録として公開しない。そのような官僚同士の議論の場に、学者を呼んで「頭の体操」をしたからといって、直ちに公開するような代物ではないのかもしれない。意思形成途上の情報だからである。とはいえ、意思形成過程の再現・検証可能性が、政府の決定手続の公開性と答責性を確保する点からは重要であり、「頭の体操」だからといって、非公開でよいとは限らないだろう。
 ということで、「会議終了後に配布資料を公表する」とされた。傍聴や動画配信をしなくとも、議事録が事後公開されれば、再現・検証可能性は担保される。しかしながら、「議事概要」では、必ずしも充分に再現・検証することはできない。発言が要約されているので、ニュアンスや真意が変わっているかもしれないし、あるいは、取捨選択されているかもしれない。
 特に、「議事概要」を見れば分かるように、意見交換(概要)における発言者が「○」となっており、誰が発言したか分からない。これが何を意味するかというと、上記のとおり、構成員は表の構成員と真の構成員との二重性を有するので、学者構成員の意見なのか、事務局又は幹事の意見なのか、全く分からない。言い換えれば、学者構成員の意見をとりまとめたのか、事務局・幹事の発言をとりまとめたのか、全く不明である。端的にいって、学者構成員が全員沈黙をしても、その逆で事務局・幹事が完全黙秘をしても、議事概要は同じものしか公表されないのである。
 この意味では、本研究会はいわゆる学識者を交えた、いわゆる研究会の体をなしていない。むしろ、単なる自治行政局内の官僚同士の会議ということかもしれない。そうして考えれば、官僚同士の内部会議の概要を公開した点は、大いに評価することはできよう。それゆえ、本研究会報告書が公表された後に、いわゆる学識者をきちんと交えた研究会が必要であろう。

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