2018.03.26 議会運営
第58回 財産取得議案の取扱いについて
財産の取得、処分については、種類と金額の両方に該当する場合にのみ議決の対象になるため、どちらか一方にしか該当しない場合は議決の対象とはならない。
議会において議決の対象となる財産取得議案には、①目的、②方法、③財産の種類、④金額、⑤相手方等を記載する必要がある。
財産取得議案は、議会における議決前に相手方と仮契約を締結した上で提出される。
そして財産の取得、処分の議案の提案権は長に専属し、議会に修正権はなく、可決又は否決の意思決定のみを当該議案に対して行うことができる。
条例に定める要件に該当する場合、議会の議決を得ないで行った財産の取得、処分は無効である。ただし、行政実例昭和30.5.19のとおり長が仮契約で議会の議決を条件としていた場合、その後当該議案を議会に提出し、議会の追認議決が得られれば当該財産の取得、処分は有効である。
○議決を経ないで行った処分の効力(行政実例昭和30.5.19)
問 条例で定める財産の処分(現行法では不動産又は動産の売払い)にあたっては、議会の議決を必要とするのはもちろんであるが、村長がその議会の議決を経ずして村有財産を当該村の一住民に売却した場合、その財産処分は有効か無効か。無効とする場合は、第三者が村長をもって正当なる村の代表者と信じてこれと取引をすることは固より当然であり、その取引をするに当たって、いちいちそれが村議会の議決を経たものであるかどうかの審査を負うべきものとするのもあまりに酷のようであり(たとえ第三者が当該村民といえども)、その取引後に議会の議決を経ていないことのゆえをもって、その村長の法律行為が当然無効となるものとすれば、第三者は自己の責任に基づかずして不当に損害を受けることになるという不合理が生ずると思うが、また、若し一応有効とする場合においては、これが議会の議決事項と定められている意義がないと思うが、このような場合の措置についてうけたまわりたい。
なお、右の場合、村長が財産処分後、村議会の議決を経た場合のその処分の効力について具体的にご教示ありたい。
答 村長の行為は無効である。なお、村長の処分が議会の議決を条件とした仮契約であった場合において、その処分後議会の議決があったときは有効と解する。
2 本問における考察
さて、本問は一般市であるA市が、地域センター建設のために、3人の土地所有者からそれぞれ、Bからは1,000平方メートルの土地を1,500万円で、Cからは1万平方メートルの土地を3,000万円で、Dからは2万平方メートルの土地を1億円で取得しようと考えていることから、A市が財産の取得、処分に関し条例で定める基準からそれぞれ個別に適用すれば、B件は基準未満であり、C、D件が基準に該当するためC、D件のみ議会の議決があれば問題ないと考えられなくもない。
しかし、大阪地裁昭和55.6.18判決(判タ425号95頁)から、地域センター建設のためにその予定地に所有者が複数いた場合、議決の対象となるのは地域センター建設のための用地取得という1件となるため、議会の議決対象はB、C、Dが所有する土地を一体とした総面積及び用地総額となる。
それゆえ、B件だけ議会の議決の必要がないということにはならず、B、C、Dの財産の取得に係る種類及び土地の総面積、用地総額はA市が定める基準以上となるため、B、C、Dすべての件を1件として議会の審議に供し、議決を得る必要がある。
○自治令別表第二(現行法では別表第四)の売払いの場合における「1件」の意義(大阪地裁昭和55.6.18判決)
前掲の各法条及び東鳥取町議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例……3項によると、同町が土地を売却する場合、1件5,000平方メートル以上の土地については、予定価格が金700万円以上であれば、町議会の議決を要することが明らかである。そうして、右制限の該当性を判断する単位について、明文の定めはないが、売却の対象となつた土地の一体性を基準にして議会の議決の必要性の有無を判断すべきものと解すのが相当である。