2018.02.13 議会改革
第36回 議会が特別職報酬等審議会を利用することは妥当か?
回答へのアプローチ
さて、ようやく回答案についての検討です。まず、Bは誤りです。国の当初の思いはともかく、報酬審を経ることや、報酬審の審議対象は国の法令で定められたものではありません。そもそも報酬審の設置自体、国の法令で求められたものではありません。ですから、「法違反」であることはありません。
次にCですが、少し検討が必要です。議員報酬の増額を求めるにしても、財政的な配慮から報酬審が開かれず、報酬が据え置きされているような事態があったとします。そのときには、先送りされたベースアップをどうするかという問題ですから、報酬審でも十分かもしれません。また、近隣市などと比較して大きな差があるというなら、何とか報酬審でも対応できるかもしれません。
しかし、お悩みには「役割が重くなったのに、この程度の報酬では……」というくだりが出てきます。もし、議員の役割を正面から見据えて、あるべき報酬を導こうとするなら、報酬審では荷が重いでしょう。議会が額の案やその根拠を示すしかありません。Aを正解としたいと思います。
実務の輝き・提言
議員報酬について住民の意見を聴くと、手厳しい批判を受けることになるかもしれません。増額の提案をするときにはなおさらそうでしょう。しかし、ここは我慢です。議員報酬は住民の関心が高い数少ない問題です。これを機会に、議会や議員の仕事を住民に理解してもらうチャンスにもなります。議会での審議に参加する以外にもどれほどたくさんの「仕事」を抱えているのか、そして議会の働きがどんな形で住民の福祉に還元できているのか、伝えましょう。そして、最後に「これだけの仕事、皆さんなら月給はいくらで引き受けますか?」と尋ねてみてはどうでしょうか。
難しくても提案する報酬額の根拠めいたものも示さなければなりません。近隣自治体との比較もひとつの指標にはなりますが、議員としての仕事を分析した上で、市長や一般職員と比べての「仕事時間」を示すことも必要となるでしょう。議会のことを住民がよく知らないからといって、専門的な用語で煙にまくのはいけません。第三者や専門家の意見で、自分たちの考えを代弁させるのもいけません。住民の批判や疑問を一つひとつ受け止めて、丁寧に答えていくしか道はないように思います。「仕事をしっかりしてもらえるなら、議員報酬としてはそれほど高いとは思わない」。そういってくれる住民を1人でも増やすことが、報酬額の増額へのたったひとつの道のような気がします。できるなら、報酬審を利用せず議会として住民に向き合う道を選ぶべきではないでしょうか。たとえ、報酬審を利用しようとする場合にも、まずは議会として議論し、その報酬の額を示して、それを市長に諮問してもらうのがいいでしょう。
(1) 平成28年度愛知県特別職報酬等審議会資料を基に作成(調査時点平成28年8月)。
(2) 堀内匠「自治体議員報酬の史的展開」自治総研通巻456号(2016年)71頁・72頁を参考にした。