2018.01.25 政策研究
第1回 ネット活用の町民全員会議で町を活性化
【インタビュー1】
見形和久・塩谷町長に聞く
町民全員会議を推進する塩谷町の見形和久町長にお話を伺った。見形町長は町の元職員で、現在2期目。初当選した2012年8月の町長選で公約に「シンクタンク構想」を掲げ、現職候補を退けた。まちづくりへの思いを語ってもらった。
――シンクタンク構想とはどういうものですか。
町の企画調整課にいたときに「協働のまちづくり」に力を入れました。当時、国(農林水産省)は農村集落の活性化を図るための「農地水事業」(農地・水環境保全管理支払交付金事業)というものを推進していました。集落が共同して農地や農道、農業用水などの改修保全を行う場合、国が補助金などを交付する事業(2007年度から)です。町としても54ある全ての集落で取り組んでもらおうと懸命に働きかけをしました。県だけでなく町からも(上乗せ)補助金を交付したり、集落ごとに担当の職員を付けたりしました。
しかし、“カネの切れ目が縁の切れ目”とでもいいましょうか、うまく続きませんでした。役場と集落を結びつけようと考えたのですが、私の思いだけで進めてしまったかなと……。それで役場を退職し、町長選(2008年)に立候補したのですが、残念ながら落選です。まったくの浪人となり、地域に入っていろいろな住民と対話を重ねる毎日を送りました。そんな生活を続けるうちに、(職員時代に掲げた)「協働のまちづくり」というのは少し性急だったかなと反省するようになりました。そして、人づくりが一番の課題だと強く思うようになったのです。
――2度目のチャレンジで現職を破って初当選したのですね。そのときに掲げた公約が「シンクタンク構想」で、町民全員で自分たちのまちの将来を考え、みんなで暮らしやすいまちを築き上げていこうという構想ですね。
町長になってすぐには進展せず、就任1年後に全集落で住民と話合いをすることにしました。地域井戸端会議と称した集落座談会です。町から私と企画調整課長ら4人が平日の夜、各集落に出向いて住民の意見や困りごと、要望などを聞きました。夏の暑い時期(2013年6月下旬から9月上旬まで)、54集落のうち51集落で行いました。地域井戸端会議では町への要望がたくさん出されましたが、参加者はどこも高齢者ばかりで、若い人の姿はありませんでした。それで若い人の意見をどうやって吸い上げるかが大きな課題だと認識しました。そんなときに岩田さんと出会ったのです。
――インターネットを利用して住民と行政を結びつけるシステム(自治体PRM)を開発した慶應義塾大学SFC研究所上席所員の岩田崇さんですね。
そうです。その岩田さんが開発した自治体PRMを活用して若い人の声を吸い上げるのです。自治体PRMはどこも取り組んだことのない事業で、当町が初めてなのでまだ慣れておりません。具体的な施策に結びつけるスピード感はまだまだです。(自治体PRMを)完全に活用できるようになったら、理想の農村集落になると思います。そのためには常に(自治体PRMを)動かしていくことが大事だと思います。
私が全町民、全集落にこだわっているのは、誰もが(町政に)参加するという気持ちを持っていただきたいからです。特定の人からしか意見が出てこなくなってしまってはいけません。自分がいないと(町は)困るんだという思いを皆さんに持っていただきたい。住民みんなの声が伝わるような町政にしたいのです。
住民の皆さんに集まってくださいといってもなかなか集まれるものではありません。団体の代表者といっても目的のある方ばかりでして、そうではない住民を置き去りにしてよいわけではありません。それでインターネットです。しかし、基本はいろいろな人との対話だと考えます。職員にはとにかく地域に足を運んで、いろいろなことをいわれて悩むことこそが一番だと諭しています。