2017.12.11 政策研究
第15回 決算②(決算と財政指標)
1 歳入・歳出分析
(1)歳入の分析
決算により、歳入の分析を行うことができるが、分析の種類として次のようなものがある。
① 一般財源比率
歳入の分類として、一般財源(普通税など使途が特定されていない財源)と特定財源(国庫支出金や地方債など使途が特定されている財源)がある。
歳入に占める一般財源の割合を一般財源比率というが、この比率が大きければ大きいほど、幅広い行政需要に応えることが可能となる。反対に、この比率が低いということは、特定財源の割合が高いということなので、財源の使い道が決められてしまい、自治体の裁量が狭くなってしまうことを意味する。
② 自主財源比率
歳入は、自主財源(地方税のように自ら調達した財源)と依存財源(国や都道府県などからもらった財源)に分類することができ、歳入に占める自主財源の割合を自主財源比率という。自主財源比率が大きければ大きいほど財政の自主性と安定性を確保することができる。
③ 経常的収入と臨時的収入
経常的収入は、毎年度、継続的、安定的に収入が確保できる見込みのあるもので、臨時的収入とは、一時的、臨時的な収入である。経常的経費は経常的収入で賄い、臨時的経費は臨時的収入と経常的経費に充当した経常的収入の残りで賄うことにより、財政構造の弾力性を確保すべきとされている。
(2)歳出の分析
歳出の分析にもいくつかの種類がある。
① 経費の目的別分類
経費をその行政目的により分類するもので、予算科目の款によるもの。議会費、総務費、民生費、衛生費、産業経済費、教育費、公債費などに分類できる。
最近では、子育て支援の充実や高齢化の影響などにより、民生費の割合が高くなってきている自治体が増えている。こうした経費は容易に削減することが困難となっており、財政上の大きな課題になる。
② 経費の性質別分類
これは、経費を義務的経費、投資的経費、その他経費に分類するものである。
義務的経費は、支出が義務付けられているもので、人件費、扶助費、公債費が該当する。投資的経費は、公共施設の建設などの建設的経費であって、インフラの整備等に要する経費となっている。その他経費は、事業の委託料や備品購入費などの物件費、維持補修費などである。
この中で、義務的経費の割合が大きくなると、財政が硬直化する。当然のことだが、支出が義務付けられている割合が大きくなってしまえば、新たな行政需要に対応することが困難になる。
最近では、扶助費の割合が大きくなってきていることが課題となっている。やはり、高齢者の増加に伴い扶助費が増加し、それが義務的経費の比率を高めているといえよう。
③ 経常的経費と臨時的経費の区分
経常的経費とは、毎年度、継続的かつ恒常的に支出される経費をいい、臨時的経費とは、突発的、一時的な行政需要に対する経費、あるいは不規則に支出される経費をいう。
この区分に対して、歳入についても経常的収入と臨時的収入に対応させることにより、自治体の財政分析を行うことができる。
2 財政指標
決算によって、自治体の黒字や赤字が分かるが、それ以外にも様々な財政指標が算出できる。こうした指標により、財政の健全性などが判断できる。
(1)経常収支比率
経常収支比率は、経常的な収入に対し、経常的な支出がどの程度あるかということを示す指標である。家計でいえば、毎月の給料に対し、家賃や食費など毎月かかる経費にどの程度充てているかというようなもの。
具体的には、経常一般財源等総額を分母とし、経常的経費充当一般財源の額を分子として、それに100をかけてパーセントで示される。一般に70~80%が適正水準といわれている。人件費、扶助費、公債費など容易に縮減できない経常的経費に対し、地方税や普通交付税など一般財源等がどの程度充当されているかを示しており、財政構造の弾力性を測定しようとする。
経常収支比率が大きいほど、新たな住民ニーズに対応できる余地がなくなり、財政が硬直化していることになる。また、経常収支比率が100%を超えるということは、経常的な収入で経常的な支出が賄えないことになり、不健全な財政状況ということになる。
(2)公債費負担比率
公債費負担比率とは、借金の程度を示す比率で、家計でいえば、どの程度をローンの返済に充てているかということ。
具体的には、一般財源総額を分母とし、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)を分子として、それに100をかけてパーセントで表す。これにより借金の返済がどの程度の割合になっているかが分かり、経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性が分かる。20%が危険水準、15%が警戒水準といわれている。
(3)財政力指数
自治体の財政力の強弱を測る指標で、国からの仕送りである地方交付税(普通交付税)にどの程度依存しているかを示す。
具体的には、(基準財政収入額÷基準財政需要額)の過去3年間の平均値となる。この指数が大きいほど財源に余裕があるとされ、1を超える自治体は地方交付税算定上の収入超過団体となり、普通交付税は交付されない。
なお、基準財政収入額とは、普通交付税の算定の基礎となるもので、自治体の標準的な一般財源収入額として算定された額となる。また、基準財政需要額も同様に普通交付税の算定基礎となるものだが、自治体が標準的な行政サービスを住民に提供するのに必要な一般財源の額となる。