2017.12.11 議会改革
今あらためて議選監査委員を考える(下)
●質問(1)監査事務局の体制は整っているのか?
X氏:不十分である。都道府県や政令市などはある程度充実しているが、小規模自治体は不十分。監査事務局の共同設置はいいアイデア。役所内の人事ローテーションで監査事務局に配属される職員が本当に、現場に対してきついことがいえるのか。監査事務局の共同設置は、人事ローテーションによる利害相反を緩和する効果がある。
●質問(2)議選監査委員以外の監査委員に問題はないのか? 中立性が担保されているのか?
I氏:我が市の監査委員は、税理士と議員だけで構成されているが、そのうち1人は行政職のOBが配置されることが望ましいと思っている。行政職のOBがいないと、問題を見抜く力が偏ってしまうのではないか。
X氏:株式会社の監査役は内部監査が中心。これだけの予算規模を持つ役所に監査がないというのは考えられない。骨のある役所OBの監査委員への就任が望ましい。
●質問(3)監査結果、監査の内部討議を公開する、あるいは傍聴を認めるなどすることは可能か? また、包括外部監査については必要か?
X氏: 監査の内部討議は、役所の失敗について固有名詞を挙げながらの議論になる。公開を前提にすれば、終始上っ面の議論になる可能性がある。
外部監査は、内部監査の制度疲労から生まれた制度であり、あった方がよい。ただし、コストの問題があるので、日常的なことは内部監査で取り組んだ方がよい。
●質問(4)議選監査委員として得た知見をどのように議会全体と共有するのか?
I氏:議選監査委員は在職中も職を退いた後も、特定の議員が利することがないよう、またプライバシーにも配慮しながら、自分以外の議員が質問につなげていくきっかけをつくることは大変重要であると、あらためて認識した。振り返ってみれば、議選監査委員在職中に得た情報の中には、問題解決につながる大事な情報も含まれていた。そういう意味では、もう少し議会としての活用の方策があったのではないかと思う。
X氏:知り得たものを卑しく使うか、尊く使うかは、議選監査委員の質の問題であろう。知り得た情報をうまく活用する方法はあるだろう。政治家の方々は結果責任であるから、公共の福祉の増進に資する結果が得られれば、それでよいともいえる。
●質問(5)議選監査委員の最大の存在意義は?
K氏:行政のコアな情報が議会に流れていること。その情報を活用するか否かは別にしても、守秘義務があろうとなかろうと、議会に行政機関の情報が流れていることは重要。
I氏:政治的な感覚、バランス感覚を持った発言ができる意味が大きい。監査委員として知り得た情報を議会に持って帰ってこられることが重要。このパイプが切られたら、情報が一切流れてこない。
X氏:議選監査委員は盲腸的存在であると思っていたが、盲腸の意義が科学的に実証されつつあるように、議選監査委員の存在意義もあらためて見直した。
ただ、力量のある政治家が行政の持つ情報と融合反応を起こすことについては、やはり脅威である。議会はほとんど利用していないが、議会の請求に基づく監査制度をもっと有効活用してほしい。
江藤:こういう現場の生の声を聞く機会はこれまであまりなかった。監査委員は教育委員会とは違い、独任制であることの運用上の難しさがある。独自の監査事務局を設置していない自治体も多い。
議選監査委員制度がうまく機能しないと、行政に対する用心棒ではなく、議会に対する用心棒になりかねない。議選監査制度のルール・基準を明確化する必要があるだろう。仮に、議選監査委員を置かない場合、議会の監視機能を既存の制度を活用しながら高めていくことが重要であろう。
廣瀬:そもそも議選監査委員制度の議論は、当然ながら、議会のチェック機能のあり方の議論につながっていく話である。こうした議論なくして、議選監査委員制度をどうするかの議論は成り立たないだろう。今回の議論をきっかけに、それぞれの議会で、住民を交えて議論していただきたい。