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2017.11.27 政策研究

第4回 偽証の認定・告発

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3 偽証の認定のレベル

 1を踏まえると、百条調査において、偽証と認定するためには、事実と異なる証言をしたことを明らかにするのでは足りず(逆に、その必要はなく)、証人があえて(故意に)記憶に反する陳述を行ったことを明らかにしなければならないこととなります。
 議会は捜査権を有しているわけではなく、告発をするにとどまるので、検察官が起訴する場合におけるのと同様の証拠関係に基づき証人があえて故意に記憶に反する陳述を行ったことの証明を要するとはいえないでしょう(1)。しかし、告発をすれば、被告発人に対する捜査当局による捜査が開始するので、人権保障という見地から、委員会は、証人が「あえてうそをついている」という相当に強い心証を形成することは必要というべきです。まして、議会を反目している政敵を懲らしめるため、偽証の認定に勇み足になるなどというのは、もってのほかです。

4 偽証の認定の困難性

 証人の陳述した事実の中には、記憶が失われることがないであろう行為などがある反面、些細(ささい)な日常行為(事務)というべきものもあり、後者については、詳細に記憶にとどめているとは限らず、事実と異なる証言をしたことをもって、偽証ということはできないでしょう。次の例を見てみましょう。

 百条委員会を構成する多数派は、市の外郭団体が起こした不祥事の隠蔽工作に市長が関与しているとの絵を描いている。市長が約1年前の部下等とのやりとりに関する尋問に対し、「私は、部下に照会や指示はしていません」と陳述した。他方、局長等の幹部は、その件で「市長から照会を受けたことがある」とか、この件で「市長に書面で報告したことがある」と証言した。
 このような事実関係の下で、委員会多数派は、市長は偽証したと認定しようとしている。

 幹部の証言は、身内である市長にとって有利といえないもので、あえて市長を陥れるという意図がないのかどうかは要検討としても、一応、真実であろうと見込まれます。そうすると、市長の陳述は、客観的事実に反することになりそうです。しかし、多くの部下を有する市長にとって、部下への指示や部下の報告は、些細な日常行為(事務)で、失念している可能性も十分にあります。
 そこで、偽証の認定に関しては、その対象となる偽証に係る行為や、その他の事情などについても注意を払う必要があります。
 あえてうそをついているという心証形成は、一般的には、①真実に齟齬(そご)するストーリーを事細かに証言したが、そのような事実は全くなかった(事実のでっち上げ)、②失念するはずのない重要事実について真実と異なる事柄を証言する場合(記憶のあり得ない欠落)に得られることがあります。これに対し、日常的な事務処理等については、真実と異なる証言をしたことをもって、直ちに「うそをついた」といえるかどうか、慎重に検討する必要があります。
 もし、証人が、全体的に、自分に不利ないし不面目なことを含め、真摯に証言しており、一部に事実齟齬がある場合には、なおさら慎重であるべきです。というのは、つぶさに資料を見ながら検討する委員と、緊張しながら、しかも、過去の事柄について証言をする証人の立場では大きく異なるからです。
 そこで、偽証の認定に際しては、次の点に留意したいものです。

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