2017.11.27 政策研究
第4回 偽証の認定・告発
弁護士 太田雅幸
1 虚偽の陳述(偽証)の意味
「はじめての百条調査」の最終回は、偽証の認定及び告発についてのお話です。まず、条文を見てみましょう。
◯地方自治法
第100条
7 第2項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを3箇月以上5年以下の禁錮に処する。
○刑法
第169条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。
地方自治法100条7項の偽証陳述の罪は、議会の調査作用を侵害する罪です。そして、その構成要件は、刑法169条(偽証罪)のそれと異なるところはないと考えられます。このうち「虚偽の陳述をした」の「虚偽」については、証人の記憶に反するものをいうとする説(主観説)と、客観的真実に反するものとする説(客観説)があります。通説は主観説であり、判例も以下のようなものがあることから主観説をとるものと考えられます。
○「いやしくも証人がことさらにその記憶に反したる陳述をなすにおいては偽証罪を構成すべき」(大判大正3年4月29日刑録20輯654頁)。
○「元来、偽証は、宣誓違反の行為を謂い、法律により宣誓した証人が五官によって知り得た事実を自己の記憶に反することを認識しながらあえて供述した場合に偽証罪が成立するのであって、その証人の供述が社会現象である客観的事実と符合すると否とを問わない」(前橋地沼田支判昭和34年1月23日)。
2 「宣誓」の実務的あり方
この罪の主体は、「第2項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人」と規定されています。そして、「民事訴訟に関する法令」の中には民事訴訟規則112条が含まれるため、宣誓は証言の前に行わせることを要します(事前宣誓。民事訴訟規則112条1項)。そして、同条2項の準用により、委員会室に所在する者全員を起立させて厳粛な雰囲気の下に手続をします。宣誓は、宣誓書を朗読させて行うこととされています(同条3項)。事務局は、「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないことを誓います」と印刷文字を有し(同条4項)、下部に署名押印欄を設けた宣誓書を準備しておき、証人の出頭時に署名押印をさせておくと(同条3項)、円滑に進行できます。
そして、委員長は、証人に宣誓をさせる前に「これから、証人には、記憶に反してうそを言わないという宣誓をしてもらいます。宣誓をした上でうそを言うと、偽証罪に問われ、3月以上10年以下の懲役に処せられることがあるので、注意してください」などと告げることが必要です(同条5項)。
その上で、宣誓後、尋問前に「偽証した場合の制裁については、先刻、述べたとおりです。したがって、注意して証言をしてください」等と念押しするのが適当です。