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2017.11.10 政策研究

今あらためて議選監査委員を考える(中)

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K氏(人口30万人を超える自治体議会議員):我が市では議長、副議長経験者が慣例として議選監査委員に就任している。私も3回経験した。議選監査委員をやりたくてそうした役職を目指した。議選監査委員は報酬、ステータスが高い。逆に報酬の高さが、本来、議選監査委員に就任すべき議員の就任を阻む要因ともなっているのではないか。少数会派の方は、議選監査委員制度に否定的である。なぜなら、少数会派の場合、同じ会派の議員が議選監査委員に就任することがないことや、守秘義務もあるため議選監査委員の仕事内容が伝わってこないからだ。
 私は、同僚議員が議選監査委員に就任して、その仕事内容、特に監査事務局が作成する資料の充実ぶりに瞠目(どうもく)して、議選監査委員を目指すことにした。少数会派であり、かつ野党的な立場の議員ほど、議選監査委員を経験することにメリットがあるのではないだろうか。少数派の議員こそ、あらゆる手立てを講じて議選監査委員を目指していただきたい。
 ここで、監査の仕事内容について触れてみたい。とかく監査というと、決算監査に注目が集まりがちであるが、それ以外にも行政監査や定期(財務)監査、例月(現金)出納検査など、様々な監査がある。これらの監査については、議会にも都度報告されている。確認されている方は少ないとは思うが。私も議選監査委員になるまでは、そうだった。しかし、これらの報告には意外と重要なことが書かれている。ただし、読み解くには、議選監査委員の経験が必要である。
 監査事務局が作成する資料は膨大な量で、長机に一列に縦置きすると、机の3分の2ぐらいの量になるほど。そして、この資料は、行政情報の宝庫である。また、包括外部監査を実施している自治体の報告書も参照していただきたい。こちらは、住民の方々の閲覧の供に資するため分かりやすく、詳しく書かれている。東京都町田市の事例は秀逸。議会活動の参考にしていただきたい。
 議会の決算認定と、監査の決算審査との最大の違いは、監査の決算審査は歳入部分の報告に、半分割いている点である。我が市では、4年前から定期監査結果報告書もより分かりやすい書式に変更した。それまでは、いったい何を言いたいのか分からない内容だった。この結果報告をもとに、別の議員が一般質問をするなどの成果も上がっている。いずれにせよ、監査のアウトプットが議員の質問につながるような形に変えていくことが、議選監査委員となった議員の重要な責務である。
 第29次地方制度調査会では、議選監査委員制度をなくす以上は、議会の実地検査権を回復すべきという議論もあった。私も議会に実地検査権を付与すること自体は賛成だが、議会事務局の事務量がさらに増えることになり、議会事務局の強化もままならない現状を見れば、相当ハードルが高いといわざるを得ない。
 また、議選監査委員にどのような議員を選任するかも議会の大きな責任である。議選監査委員の優位性は、地域の裏の事情にも精通していることである。学識の監査委員は、地域の事情にそれほど精通していないことが多い。私も学識の監査委員に事情を説明する機会が多かった。職員OBの監査委員もいわゆる現業部門を経験したことがないと、事情に精通していない場合もある。よって、議選監査委員用心棒説というのは当たっている。
 X氏も言っていたように、監査委員、ましてや議選監査委員はあまり好かれていない。また、I氏が言うように、議選監査委員は本気になれば今でも相当なことができることは、自分自身がやってみて納得できる。ただ、実態として、本気になれる人を議選監査委員に選任することが少ない。ここが、議会の最大の課題である。財政に余力のある自治体は議選監査委員制度の存続を、余力のない自治体は議選監査委員の共同設置も検討すべきだろう。また、参加されている方々の自治体の監査結果が充実していない場合、充実している自治体の例を引いて充実を促すということを、特に議員の皆様にはやっていただきたい。

* * *

 次回は、各パネリストとコーディネーターの緊迫したやりとりをご紹介します。

(下)に続きます。近日公開予定です。(編集部)

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