2017.11.10 政策研究
第14回 決算①(決算の概要)
5 決算カード
決算カードとは、先の決算統計の主な指標や数値を一覧にしたもので、各自治体を1枚のカードにしたもの。総務省のホームページからその内容を確認することができる。
決算カードの主な内容は、以下のとおり。
・人口、面積
・産業構造(国勢調査結果)
・収支状況
歳入総額、歳出総額、歳入歳出差引、翌年度に繰り越すべき財源、実質収支、単年度収支、積立金等
・一般職員等
一般職員数、教育公務員、臨時職員の給与等
・特別職の状況
定数、平均給料(報酬)月額等
・歳入の状況
地方税、地方消費税交付金、地方交付税、分担金・負担金、使用料、手数料、国庫支出金、都道府県支出金、地方債等
・市町村税の状況
普通税、目的税等
・性質別歳出の状況
人件費、扶助費、公債費、物件費、維持補修費、繰出金、積立金、投資的経費等
・目的別歳出の状況
議会費、総務費、民生費、衛生費、教育費等
・経常収支比率
・公営事業等への繰出
・実質収支
・健全化判断比率
・積立金現在高
・地方債現在高
6 形式収支・実質収支・単年度収支
(1)形式収支
その年の決算が、黒字なのか赤字なのかを考える際に、歳入決算額と歳出決算額を比較することになるが、これについてはいくつかの見方がある。
まず、歳入決算額から歳出決算額を単純に引いたもの(歳入歳出差引額)を形式収支という。これは、出納閉鎖期日(5月31日)における当該年度中に収入された現金と支出された現金の差額で、現金主義における単純な差引収支となる。
形式収支が黒字の場合は、歳計剰余金(一会計年度における実際の収入額から実際の支出済額を差し引いた残額)を処分することになるが、赤字の場合は翌年度の歳入を繰上充用することになる。これは、出納整理期間において、歳出に対し歳入が不足しているため、支出義務を履行できないからである。
(2)実質収支
実質収支とは、形式収支から翌年度に繰り越すべき財源を控除した額をいい、当該年度における実質的な収入と支出の差額を見るもの。
翌年度に繰り越すべき財源とは、自治法に基づくものと、決算状況調査による決算統計上のものの2種類がある。
自治法に基づくものとしては、継続費逓次繰越額、繰越明許費繰越額、事故繰越繰越額の3つの繰越財源(歳出予算の翌年度繰越額から未収入だが翌年度に確実に収入が見込まれる国庫支出金、地方債などの未収入特定財源を差し引いたもの)となる。
決算統計上のものとしては、より実態に近い財政状況を知るため発生主義を徹底し、上記3つのほかに、事故繰越額と支払繰延額(当該年度に支出義務が発生している債務について、その支払を翌年度に繰り延べたもの)がある。
この実質収支は、自治体の実質的な黒字・赤字を示すので、自治体の財政運営を判断する重要なポイントとなる。もちろん黒字であることは重要だが、多ければ多いほどよいというものではなく、あまりに多いのであれば、行政サービスの向上や、住民負担の軽減に充てられるべきと考えられる。なお、一般的には、標準財政規模の3~5%程度が望ましい水準といわれている。
反対に、実質収支が赤字の場合で、一定限度を超えた場合には、地方債の発行が制限されることとなる。
(3)単年度収支
単年度収支とは、当該年度のみの収支結果を見るもので、当該年度の実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額をいう。実質収支は前年度以前からの収支の累積となっているので、当該年度のみの単年度の収支の状況を把握するためには、当該年度の実質収支から前年度の実質収支を差し引く必要がある。
単年度収支が黒字ということは、前年度の実質収支が黒字の自治体であれば、実質収支の黒字が増えたことを示す。反対に前年度の実質収支が赤字の自治体であれば、赤字が減少したことを示す。
また、単年度収支が赤字ということは、前年度の実質収支が黒字の自治体であれば、剰余金を使ってしまったということになり、反対に前年度の実質収支が赤字の自治体であれば、赤字が増加したことになる。