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2017.10.25 政策研究

【フォーカス!】地方政策に変化はあるか

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敵失に助けられた安倍政権

 10月22日投開票の第48回衆院選は、自民党、公明党が合わせて310議席を獲得し定数の3分の2を確保した。憲法改正の発議も可能だ。さらに自民党だけでも、国会運営を主導できる絶対安定多数(261)を上回っており、大勝と言えるだろう。

 安倍晋三首相が9月25日に解散表明した時には「森友問題・加計問題隠し」「大義なき解散」などと批判された。さらに東京都知事の小池百合子氏が率いる「希望の党」が同じ25日に旗揚げしたこともあり、1年前の東京都議選の再来かとも懸念された。この時点では、解散が自らの首を絞める「やぶ蛇」になる懸念さえあったと言える。

 埋没することを恐れた前原誠司代表が、民進党をなぜか解党し希望の党に抱きついた。だが小池氏が立候補せず、民進党のリベラル議員を「排除する」と発言したことで潮目が変わる。上から目線の言葉もあって、希望がしぼんだのだ。さらに、排除された立憲民主党側に対する判官びいきもあって、希望は結局、野党第1党の座さえ確保できなかった。

 小選挙区制というのはもともと、二大政党制向けの選挙制度だ。二者択一によって、健全な政権交代ができる。これが与党、保守系野党、リベラル系野党の3極の争いとなっては自民党が有利なのは火を見るよりも明らかだ。野党を割ることで与党有利の情勢をつくり出した小池氏と前原氏が、自民大勝の功労者であり、野党にとっての戦犯とも言えるだろう。

 それにしても「国難突破解散」というネーミングや、「この国を守り抜く」と書かれた自民党の政策パンフレットには、誇大広告的な印象さえある。例えば、北朝鮮の問題。日本がミサイルの射程に入ったのは最近ではなく、何年も前からだ。北朝鮮に強く出て圧力をかけることは外交のイロハのイで当然であり、争点でも何でもない。「圧力路線に選挙でOKが出た」と意気込んでも何も変えようがない。そもそも選挙を通じて争点にすべき対象ではないのだ。

 本当に問われるべきは、ロシアのプーチン大統領と19回も首脳会談を行いながら、北朝鮮問題への圧力に助力を得られない安倍首相の外交手腕である。北朝鮮の核開発の進展にロシアの影がちらつくことに対する首相の対応である。さらに言えば、これだけ北朝鮮が暴走しているのにもかかわらず、その後見役でもある中国の習近平総書記(国家主席)に電話して会談することもできず、ひたすら米国のトランプ大統領に頼り、対応を願うことしかできない「地球儀を俯瞰する外交」の成果ではないか。

 同様に「少子高齢化」も国難と安倍首相は主張する。確かにそうだが、これも今に始まった話ではない。出生率が下がり始めた1970年代後半からもっと対応すべきだった。1989年の「1.57ショック」後のエンゼルプランや2003年の少子化対策基本法がどうして機能しなかったのかが検証されるべきである。つまりこれまでの自民党政権が政策を誤ったから国難に陥ったとも言えるのだ。

 北朝鮮対応も少子高齢化も失敗した政策を死屍累々と積み重ねてきた自民党政権こそ国難を招いたと言うこともできるだろう。これに頬かむりをすることは本当は許されない。

 最後に安倍政権の地方政策をチェックしたい。自民党の公約では「地方創生で活力ある元気な地方をつくります」とのスローガンがあり、①地方大学の魅力向上に取り組み、若者の地方での就学・就業を促進します、②政府関係機関の地方への移転に取り組み、企業の本社機能の地方移転も積極的に支援します―などとある。つまりは、これまでの地方創生策の羅列にとどまっており新味には乏しい。

 希望の党が伸びていれば、東京23区にある大学の定員増の抑制など現在進める政策の見直しや、道州制の導入について議論が始まる可能性はあった。だが、自民党1強の状態であれば大きな変化は出てこないだろう。

 つまりはアベノミクスから始まって地方創生、1億総活躍社会、働き方改革、人づくり革命などと新たな課題を毎年取り上げ、解決に前向きな姿勢を示す。しかも政策が成果を上げているかどうかを検証する余地さえ与えないという、何事も上書きしていく政権の姿勢がこのまま続くといことだ。

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