2017.10.25 政策研究
任期と期数
議員は、一人ひとりが選挙で選ばれたという点で対等であり、議会の審議においては発言権と票決権が平等であるという点でも期数は関係がない。4年ごとに選挙で選ばれるという意味で、当選したすべての議員は新しい議員なのである。
報酬も政務活動費も、期数に関係なく同じ扱いとなっている。1期目だから報酬が低いとか、期数が増えるごとに報酬が上がるということはない。年功序列ということはない。期数に関係なく、すべての議員は、一人前に働いてもらわなければ困る。ベテラン議員だから議会で寡黙を通すというのも、新人議員だから見習いとしてぼちぼち、というのもおかしい。
なるほど、小規模な市町村の議会では、議員選挙で新人の立候補者が出てこないため、難儀をしている事態も発生している。裏返せば、現職議員の再選が続き、実際に5期も6期もといった議員が出ている。同じ人が20年間とか24年間も議員であり続けているわけである。実際に何期も議員を続ける「ベテランさん」ないし「おなじみさん」がいることは確かである。しかし、ベテラン議員が偉いわけではない。
もともと議員間に上司・部下の関係はない。議会の議長は、「議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する」ことになっているが、その議長は、議員の中から議員の選挙によって1人選ばれるのである。議長は議会活動を取り仕切る役割を果たすが、他の議員に指示や命令を出せる上司になるわけではない。
世間一般で行われている先輩後輩の作法や長幼の序が議員間でも通用することもあろう。いかに対等な立場に立つといっても、新人議員は先輩議員から学ぶという点で謙虚であるべきだし、先輩議員は、偉ぶらず、威張らず、さすが先輩議員と尊敬されるような言動が望まれる。一癖も二癖もある政治家の集まりであるから、そうそう望ましい関係を想定するのは無理かもしれない。選挙戦ではなりふりをかまわず票集めで争ったかもしれない。だが、当選すれば、同じ議会の議員として共同で責任を負うメンバーになるのである。
それぞれの議員は、選挙のときに、それなりに公約を述べて支持を訴えているはずであり、それを全部持ち寄ると、共通しているもの、比較的早期に実現可能なもの、検討と準備に時間を要するものと、様々であろうが、4年任期の中に、共通して実現を目指す政策をとりまとめることができるかどうかが重要である。これは「チーム議会」の実現を目指すことになる。思い思いの公約といっても、地域に根差した政策課題に共通点が全くないということは考えられない。会派の壁は乗り越えられる。
期数に関係なく各議員の提案を出発点にして議員間討議を行う。そこには執行部は呼ばない。討議における期数の多い議員の出番は、既存の施策、執行部の対応、実現可能性などに関する知見を披露することである。無理だ、難しいというのではなく、可能性や突破方策を追求する。ベテラン議員の経験は、提案を抑えるのではなく激励・推進するように生かされるべきである。期数が多いことは、偉さや実力の証しではない。ベテランの議員が選挙戦で約束した公約も、他の同僚議員の賛同を得なければ実現できない。期数の多さを自慢げに上司のように振る舞うのは思い違いである。基本的には期数、年齢、実績にかかわらず、議会の構成メンバーとして対等な立場で自由闊達(かったつ)な意見を戦わせることが重要である。
期数に「物を言わせて」、1期生は発言権すら抑えられてペーペー扱いにされ、2期目になってようやく一人前と見なされ、3期目から役どころが回ってくるといった、いわば「期数序列制」というべき実態があるという。その端的な例は、海外視察で1期目の議員を排除し、当選回数によって1回に使う金額を違えたりしている慣習である。議員が対等で、しかも視察が同じ目的であるにもかかわらず、期数で差をつけるのは合理的でない。視察を当選回数によって決めて、新人議員は行けなくしていることに理があるのであろうか。論功行賞的な海外視察は期数を重視する悪しき慣習である。
期数を重んじて国内外視察を組むから、しばしば、住民から「観光旅行ではないのか」という非難が浴びせられることにもなる。もともと海外視察にはよほどの理由がなければならないし、住民がなるほどと思える視察の計画書と報告書の公表が必要である。調査のための旅行に行くのであるから、事前学習がしっかりしていなければ、現場に行っても学ぶことは少なく、仕入れた情報の活用も期待できない。
小規模自治体の議会では、議員定数と立候補者数が同じで、しかも全員が現職で無投票当選というところも出てきている。何期であろうが、現職候補であろうが、ともかく議員定数を超える立候補者数が嘱望されている。高齢の議員が多数を占める議会もある。期数の多い高齢の議員が多数だから議会活動が停滞するというのでは情けない。「老いてますます盛ん」を議会活動で示し、新人議員の登場を歓迎し、住民の信頼を得られる議会人になれるよう激励することである。