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2017.10.25 議会改革

第16回 問われる議員定数・報酬 ――住民自治の進化・深化の視点から考える――(下)

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 a.日当制の是非
 矢祭ショックといわれるように、福島県矢祭町議会において「日当制」が導入された。しかし、日当交付の対象を、議会活動(本会議、委員会等への出席)に限定して議会・議員活動を狭めたこと、日当制への移行時にその他の条件(政務活動費、議会事務局など)の充実を行わなかったことから、議会力を低下させる結果となった。ただし、これらを是正すれば、議会力をアップさせる方向でも日当制導入は理論上可能である。しかし、基準を設定すること(対象や額)は難しいことも考慮すべきである。なお、とりわけ町村議会では、日当制を導入すると現行の報酬よりも増額するという自治体も多い。これを踏まえて議論してほしい。
 b.個々の議員の成果報酬は民主主義にはなじまない
 熊本県五木村議会で、個々の議員の成果に基づく成果報酬(全額ではなく一部)が実施されたが、すでに廃止されている。出欠の評価は客観的にはありうるが、政治的な活動の評価(質問・質疑内容、政策提案、地域活動への参加、議会改革への取組み)には、評価者の価値観が入る。活動の評価を住民やNPOが行うことは可能であるが、あくまで検討のための素材としてのみ扱うべきであり、その評価を議会として正式に報酬と連動させるわけにはいかない。選挙こそが議員の公的な評価となる。なお、五木村の議員の成果報酬方式は、その決め方にも問題(審議委員メンバー・会議が非公開)があった。
 c.次善の策としての年齢別報酬
 長崎県小値賀町議会は、年齢によって議員報酬額を区分するという全国で初めての条例を制定した。月額18万円の議員報酬を、50歳以下に限り30万円に引き上げるものである(2015年4月の町議会議員選挙当選者から適用)。まちづくりには働き盛りの人たちの視点が重要という理由からである。議員の高齢化や無投票当選の増加を考慮した、意欲的な試みといえる。ただし、これは役務の対価の論理とは異なる理由に基づいている。
 なお、50歳以下の議員は先頭に立って活動する自覚と、50歳を超える議員も同様に活動する自覚なしには、新たな議会の作動は難しくなる。50歳を超える議員が年金生活者であるか、あるいは兼業によるある程度の収入の確保という条件がない限り不公平感も広がる。議長自身も「次善の策」と語っているように、議員報酬の意味を根本的に考える機会を提供したといえよう。同時に、すでに指摘したように、子育て世代に対しては育児手当等の手当の支給の議論と並行してもよい。
 d.問題のある期数別報酬
 期数によって報酬を区分する見解も聞かれる。しかし、表決権等の議員の権限は、平等である。期数といった経験が加味されてはいない。そもそも、期数の多い議員すべてがより住民の福祉向上を進めているとは断言できないし、1期目であってもそのように行動すべきである。

~理解をさらに深めるために~
① 議員の身分の規定を明確化する。
② 定数・報酬を住民と考える手法を開発する。
③ 議会事務局・議会図書室等、その他の条件を体系的に充実させる。
④ 議員のなり手不足と定数・報酬の関連を探る。


(6) 会津若松市議会方式は、全国町村議会議長会政策審議会「議員報酬のあり方について」(1978年7月)を参照したものである。その後、神奈川県葉山町議会は会津若松市議会方式をより精緻化している(「議員報酬のあり方について(報告書)」2015年3月12日)。
(7) 今日では議論されなくなってきたが、「多人数議会と副議決機関モデル」にも活用できる(地方行財政検討会議)。「議会内理事会」の理事と、恒常的には活動しない議員(調査研究をしない非常勤という意味ではない)の存在を認める議会制度の構想に道を開くものである。

〔参考文献〕(直接関連するものに限定)
◇会津若松市議会編(2010)『議会からの政策形成――議会基本条例で実現する市民参加型政策サイクル――』ぎょうせい
◇マックス・ヴェーバー(脇圭平訳)(1980(原著 1919))『職業としての政治』岩波文庫
◇江藤俊昭(2006)『自治を担う議会改革――住民と歩む協働型議会の実現――』イマジン出版(増補版 2007)
◇江藤俊昭(2009)『討議する議会――自治体議会学の構築をめざして――』公人の友社
◇江藤俊昭(2011)『地方議会改革――自治を進化させる新たな動き――』学陽書房
◇江藤俊昭(2012)『自治体議会学――議会改革の実践手法――』ぎょうせい
◇江藤俊昭編著・自治体学会議会研究ネットワーク著(2015)『Q&A 地方議会改革の最前線』学陽書房
◇大森彌(2007)「自治体議会議員の『職務』――固定観念の打破に向けて――」『議会政治研究』84号
◇大森彌(2016)「政務活動費と議員報酬――『千代田区特別職報酬等審議会』の答申」『議員NAVIウェブマガジン』2016年2月25日掲載(https://gnv-jg.d1-law.com/article/20160225/5126/)(2016年4月12日アクセス)。
◇全国町村議会議長会政策審議会(1978)「議員報酬のあり方について」(「議員報酬についての『全国標準』」1978年)。
◇全国都道府県議長会(2004)『二元的代表制の意義と議会の役割――分権時代の議会と首長の関係を考える――』

※拙稿「問われる議員定数・報酬」『地方議会人』2016年5月号を修正加筆している。

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