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2017.10.10 議会運営

第34回 議選監査委員の選任はやめるべきか

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実務の輝き

 回答としてはBを選択したのですが、議選監査委員を一切認めるべきではないなどというつもりはありません。監査委員が3人だとしたら、ベストミックスは、①公認会計士など有資格者、②元職員、③議選、の三者なのかもしれません。専門性は他の委員に譲っても、住民視点(批判視点)での活躍が期待できるからです。4人以上の場合も同じです。ただ、2人の場合には考えなくてはなりません。総務省の資料によると、全市町村の監査委員(平成27年度)のバックグランドは表のようなものだそうです。

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 市町村の監査委員は原則2人です(自治法195条2項)。条例を定めて増員することもできますが、それをしている自治体は144にすぎません。総務省「市町村数の推移」によると、平成28年10月10日現在の市町村数は1,718ですから、9割以上の市町村において、監査委員は原則の2人体制ということになります。2人のうち、1人は、公認会計士、税理士又は弁護士などの有資格者で決まりだと思いますが、もう1人としては、案外、その自治体の元職員がいいのかもしれません。自治法196条2項は、元職員について1人しか選任することができないとしています。その趣旨を十分に理解した上でも、監査には、それぞれの自治体特有の「土地勘」みたいなものが必要ではないかと思うのです。議員も一般に「土地勘」はありますが、監査委員としての資質とやる気にバラつきがあることを考えると(大変失礼なことを述べています)、元職員の専門性に期待せざるを得ないのです。公認会計士などが監査委員となっている場合には、元職員が監査委員となる弊害を防ぎながら、その知識を生かすことができるように思います。
 ただ、「議選監査委員の選任をやめたら」などとは口が裂けても議会事務局からいえることではありません。結論はどうなるにしても、議員の方から、一度、問題提起していただくとありがたいです。

提言

 実地検査権がないのですから、議会にとって監査を利用するというのは重要です。しかし、それは、監査委員として「入り込む」のではなく、必要な場合に、議会として監査を求めていく方法で実現すべきであると思います。それには、ズバリ自治法98条2項に定める「議会の請求による監査」を利用することです。

〇地方自治法
第98条 略
② 議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務(略)に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができる。この場合における監査の実施については、第199条第2項後段の規定を準用する。

 自治法制定時のコンメンタールにも議会に実地検査権が与えられなかった理由としてこう書かれています。「地方自治法においても、議会が、当該府県市町村の事務について実地検査を必要とすると認めた場合には、何時にても監査委員に対して監査を請求し、その結果の報告を請求することができることになっている」(鈴木俊一『地方議会の運営―都道府県市町村議会―』時事通信社(1948年)52・53頁)。
 ところが、議会の請求による監査は全国的にあまり利用されていません。総務省の「監査委員制度に関する調」によると、都道府県では平成26年度、平成27年度ともに利用は1件もありませんでした。市町村についても、平成26年度が26件、平成27年度が47件にとどまります。この「議会の監査請求」という方法を忘れてしまっている議会さえあります。監査の結果を受けて、不明な点があれば、さらに、議会は監査委員の出席を求めて説明などを求めることもできます(自治法121条1項)。これを使わない手はありませんし、使っているうちに上手に使えるようになります。また、コスト増になりますが、議会の請求による監査の際には、監査委員の監査に代えて、外部監査を行うよう条例を定めておく方法もあります(個別外部監査契約:同法252条の40)。
 監査の実効性を増すためには、本当は、監査委員事務局の強化が一番なのかもしれません。監査の実効性を高める改正が行われたのはいい機会です。この際、議会事務局の協力も得て、現行法の枠の中で、監査の実効性を高めていくためにどのような「くふう」ができるのか、いろいろと議会で考えてみてはどうでしょうか。議選監査委員をどうするかも、その中で議論できると最高です。そこに監査委員のポストに拘泥しない議会の姿があればさらに最高だと思います。

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