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2017.10.10 政策研究

第13回 新たな予算編成方法と歳入確保策

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江東区福祉推進担当部長 武田正孝

 新人議員の新(あたらし)議員(だんご市議員1期目、30代・女性)の叔父に当たる前財(ぜんざい)課長(おわん市課長、50代・男性)は、おわん市でかつて財政課長を務めていました。新議員は前財課長に自治体の財政について、いろいろと質問をしています。

前財(ぜんざい)課長
おわん市入庁30年目。昨年度まで財政課課長を務めていた。50代半ばを迎え、後進の育成に熱心に取り組んでいる。


新(あたらし)議員
だんご市市議会議員。昨年の4月に地方選挙で議員になったばかり。民間企業での勤務を経て、議員を志した。まちづくりや教育に興味がある。年齢は33歳と、議会の中でも最若手。前財課長の姪(めい)っ子。

前回までに予算編成のプロセスを確認できました。今回のテーマは、「新たな予算編成方法と歳入確保策」ですか。

新議員

そう。これまで、どこの自治体でも見られる伝統的な予算編成の方法を見てきたが、新たな手法もあるんだ。それを見ていきたいと思う。また、様々な歳入確保策についても、いろいろな自治体で工夫をしているからね。

前財課長

なるほど、おもしろそうですね。

新議員

どちらも、予算編成にとっては重要な内容だからね。では、早速始めようか。

前財課長

1 新たな予算編成方法

 最近では、新たな手法で予算編成を実施しようとする動きがある。この背景には、各部署に権限を持たせる分権化、住民参加・協働の推進、予算の「見える化」などがある。
 ここでは枠配分予算と市民参加型予算を取り上げる。

(1)枠配分予算編成
 枠配分予算編成とは、一会計年度に見込まれる一般財源の予算枠をあらかじめ各部署に配分し、各部署がその範囲内で予算を編成する方式のこと。予算要求・予算査定の権限を移譲することで、各部署の自主性と自律性を確保するとともに、財政部門の労力を軽減させる効果がある。
 実際の事務の流れとしては、各部署に割り振る枠を決定するために、行政評価結果、前年度の事業実績、来年度の方針の決定などがなされる。最終的には、首長をトップとする会議でその枠配分の内容を決定し、予算編成方針などとともに財政担当部門から各部署に通知される。
 各部署は予算編成方針、示された予算枠の中で予算編成を行う。財政担当部門は、各部署が行った予算をまとめ、予算案を確定する。このような流れで予算をまとめていくのが、枠配分予算編成となる。
 この方法は、先のようなメリットがある一方、デメリットも指摘されている。具体的には、枠配分を適切に実施できるか、インセンティブをどのように設定できるのかなどである。また、実態として、各部署の査定を行う職員を元財政課職員にして、その者たちを各部署に異動させざるを得ないケースもある。

(2)市民参加型予算編成
 市民参加型予算編成とは、予算編成の段階から住民の意見を取り入れようとするものである。
 例えば、一般市民で構成される市民委員会が、自治体とは別に、独自に予算案を作成し、自治体がつくる予算案と市長が比較した上で、最終的な予算案を議会に提出するという方法がある。
 また、一部の予算編成を市民に任せる地区予算制度という方法もある。これは、各地区が実施する事業に一括交付金を与える制度で、従来の地域向け補助金を一部廃止し、包括的な交付金制度となっているものである。
 これ以外にも、予算要求、査定内容と理由など編成過程の細かな点まで公開する「予算編成過程の公開」や、個人住民税の1%を市民投票により補助する制度、予算前にNPOから事業提案を受ける制度などがある。

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